米国との貿易摩擦において、欧州連合(EU)が「屈服の道」を選んだとする見方が強まっています。特に4月10日、米国との間で合意した15%の関税率協定は、EU内部から後悔の声が上がる事態となりました。米トランプ政権の圧力に対し、EUが早々に妥協を選択し、中国との連携による「反トランプ戦線」を築けなかったことが、痛恨のミスであったと指摘されています。
20XX年7月27日、スコットランドのターンベリーで会談後に握手するトランプ米大統領とフォンデアライエン欧州委員長。米国の関税圧力に対するEUの戦略的対応が焦点となった。
「屈服の道」の始まり:フィナンシャル・タイムズ紙の分析
英フィナンシャル・タイムズ紙は、EUが米国からの報復関税を中断した4月10日を「交渉という名の脅迫を受け入れた時」と厳しく定義しました。事の発端は、米が3月に全世界的な鉄鋼、アルミニウム、自動車への25%関税施行を発表し、さらに4月2日にはEUに対し20%の相互関税を予告したことにあります。
世界の金融市場が混乱に陥る中、トランプ大統領は同月9日に相互関税を90日間猶予し、基本関税10%のみを課す決定を下しました。これに対し、EUは翌10日、25%の報復措置を中断するという形で応じました。フィナンシャル・タイムズ紙は、世界最大の貿易ブロックであるEUがこの時、一歩も引かなかったならば、より有利な条件を引き出せた可能性があったと問題を提起しています。即座に報復措置を講じて米国の消費者や企業に打撃を与えていれば、トランプ大統領の考えも変わったかもしれないという期待が語られています。
中国との連携欠如とEUの慎重論への批判
ある外交関係者は、「他の者(中国)とならず者(トランプ大統領)に対抗しなかった。共に立ち向かわなければ、各個撃破されるしかない」と指摘しています。元欧州委員会関係者も、「EUが4月に米国に強く対応していたらどうだっただろうか。米国の関税引き上げに報復した中国と連携し、『ワンツーパンチ』を繰り出していれば状況は好転しただろう」とフィナンシャル・タイムズ紙に語りました。EUが930億ユーロ(約1090億円)規模の報復関税を発動したのは、あまりにも遅すぎたとの見方が示されています。
同紙はまた、トランプ大統領の突発的な行動を予測できず、慎重論に終始したEUの動きに対しても辛辣な批判を展開しています。「EUの技術官僚らがクインズベリー・ルール(現代ボクシングの基礎となる規則)に従い正統ボクシングをしている間に、トランプはニューヨークの路上で拳で殴っていた」という比喩は、EUの戦略的失敗を象徴しています。
米国の戦略とEU内の亀裂
「米国製品の輸入を増やし、関税相互引き下げを誘導し、失敗すれば報復する」という常識的な戦略は、3月のトランプ関税奇襲施行によって完全に狂わされました。その後、対米強硬策と穏健策の間で加盟国の意見が分かれる状況が続きました。
このような混乱には、米国が他国と交渉を行う際に見せた態度も一役買っています。5月に英国が関税10%の協定結果を引き出すと、ドイツなど一部加盟国はこれを肯定的なシグナルとして受け止めました。米国が中国と一部ながら関係改善を試みた時も同様の期待がEU内部に生まれました。イタリアやドイツは、「米国がすべての産業関税を撤廃すればEUも撤廃する」という既存の提案を改めて確認し、希望を捨てませんでした。しかし、フィナンシャル・タイムズ紙は、「だが実際に米国は継続して一方的な譲歩を望んできた」と結論付けています。
結論
EUが米国との貿易摩擦で直面した課題は、単なる経済問題に留まらず、多国間協調の重要性と、予測不可能な国際情勢における戦略的柔軟性の欠如を浮き彫りにしました。フィナンシャル・タイムズ紙の分析は、EUが過去の教訓から学び、より結束した外交・貿易戦略を構築する必要があることを示唆しています。
参考文献
- Financial Times (フィナンシャル・タイムズ) 報道記事
- AFP=聯合ニュース (AFP=Yonhap News) 関連報道
- 各外交関係者および元欧州委員会関係者のコメント