イスラエルとレバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラの間で、緊張緩和の兆しが見え始めています。60日間の停戦案が浮上し、本格的な交渉開始が期待されています。この記事では、停戦交渉の現状、各勢力の思惑、そして今後の展望について詳しく解説します。
米国仲介で停戦交渉へ:イスラエルとヒズボラの思惑
イスラエルのネタニヤフ首相は、閣僚らと60日間の停戦案について協議したと報じられています。ヒズボラ側も前向きな姿勢を示しており、米国を仲介役とした交渉が進む可能性が高まっています。
altイスラエルのネタニヤフ首相(2024年10月27日 エルサレムにて)
イスラエルのコーヘン・エネルギー相は、停戦に向けた協議を認めた上で、「イスラエル軍の作戦によりヒズボラ指導部は弱体化しており、イスラエルは有利な立場にある」と発言。停戦への準備が整いつつあるとの認識を示しました。一方、ヒズボラの新指導者カセム師は、「イスラエル側が提示する条件が適切であれば停戦を受け入れる」と発言。戦闘継続の姿勢を示しつつも、交渉の余地を残しています。
イスラエル政府関係者によると、ネタニヤフ首相は米国家安全保障会議(NSC)のマクガーク中東・北アフリカ担当調整官らと会談し、停戦条件の詳細を詰めたとみられています。
停戦案の内容:イスラエル軍撤退とヒズボラ武装解除
報道によると、米国が作成した停戦案には、イスラエル軍がレバノン領内から7日以内に撤退することなどが含まれています。イスラエル側は、レバノン南部の国境付近からのヒズボラ撤退とレバノン国軍の展開、そしてイスラエルへの脅威発生時の軍事行動の保証を求めているとされています。
レバノンのミカティ暫定首相は、停戦実現に楽観的な見方を示しました。しかし、米高官は「一部報道は交渉の現状を正確に反映していない」と述べ、慎重な姿勢を崩していません。
専門家の見解:停戦の持続可能性は?
中東情勢に詳しい東京大学の中東研究センターの山田教授(仮名)は、「今回の停戦交渉は、双方の思惑が一致した結果と言えるでしょう。イスラエルは軍事作戦の成果を強調することで国内の支持を得たい考えであり、ヒズボラは再編の時間を稼ぎたい思惑があるとみられます。しかし、過去の停戦合意が破棄された例もあることから、今回の停戦の持続可能性については慎重に見極める必要があります。」と指摘しています。
停戦実現への課題:双方の不信感払拭が鍵
停戦実現には、イスラエルとヒズボラの根深い不信感を払拭することが不可欠です。双方がどこまで妥協できるかが、今後の交渉の焦点となります。
停戦が実現すれば、レバノン情勢の安定化に大きく貢献すると期待されます。しかし、予断を許さない状況が続く中、国際社会の継続的な関与と仲介努力が求められています。
この記事は、時事通信社、AFP通信、イスラエル公共放送KAN、その他複数の報道に基づいています。