秋の園遊会は、皇族方の華やかな装いを楽しむ絶好の機会です。2024年10月30日に赤坂御苑で開催された秋の園遊会では、雨上がりの澄んだ青空の下、天皇皇后両陛下をはじめとする皇族方が美しい着物姿で出席されました。中でも、雅子皇后が着用された紅葉の訪問着は、ひときわ目を引く華やかさでした。この記事では、雅子皇后の着物の魅力を、皇室の装いに詳しい歴史文化学研究者である青木淳子氏の解説を交えながら紐解いていきます。
雅子皇后の着物:錦秋を表現した一枚
青木氏によると、雅子皇后の訪問着は「一枚の着物の中に、初秋から晩秋まで、まさに錦秋の美が表現された」逸品とのこと。白に近い淡いオレンジ色の地色に、色鮮やかな紅葉が折り重なるように描かれており、遠目からでもその美しさが際立っていました。
裾濃のグラデーションと金糸の輝き
着物の地色は、裾に向かって薄いオレンジ色へと変化する「裾濃(すそご)」と呼ばれる技法が用いられています。胸元には、黄色や朱色の紅葉の葉が小枝に付き、一部には金の散らしが施されています。さらに、紅葉の縁取りには金糸が使用されており、雅子皇后の顔周りに華やかな輝きを添えています。
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紅葉の模様と腕の動きが生み出す秋の気配
胸元から袖にかけて流れるように描かれた紅葉の模様は、雅子皇后の腕の動きに合わせて揺らめき、訪れた人々に秋の気配を伝えていたことでしょう。裾にあほどに濃くなる紅葉の色合いと金糸の刺繍は、晩秋の深まりを感じさせ、全体の調和がとれた美しい着物姿でした。
自然体で着こなす雅子皇后:慣れ親しんだ帯の存在
雅子皇后が気負いなく自然体で着こなせている理由の一つとして、青木氏は「締め慣れた帯」の存在を挙げています。雅子皇后が着用されていた帯は、菱枠の中に唐花が織り出された金、朱、白の帯で、着物との調和も抜群でした。この帯は、1999年や2018年の秋の園遊会など、過去にも何度か着用されているとのこと。また、「皇室御一家 平成31年 2019」カレンダーでも、今回の着物とは異なる紅葉柄の着物に、この帯を合わせていた写真が掲載されていることから、雅子皇后にとって馴染み深い帯であることが伺えます。
帯揚げと帯締めの絶妙なコーディネート
薄ピンク色の帯揚げは、柔らかな印象を与え、朱色の「ゆるぎ」と呼ばれる帯締めは、装いをさりげなく引き締めています。「ゆるぎ」は、古くは男性の冠の紐に使われていた組み方で、シンプルながらも格調高いとされています。雅子皇后は、帯揚げと帯締めの色や素材を巧みに組み合わせることで、全体のバランスを整え、洗練された着こなしを完成させていました。
まとめ:秋の園遊会を彩る雅子皇后の着物姿
雅子皇后の紅葉の訪問着は、錦秋の美しさを体現した、まさに芸術作品と言えるでしょう。着物と帯、帯揚げ、帯締めの絶妙なコーディネート、そして自然体で着こなす雅子皇后の立ち居振る舞いは、秋の園遊会に華を添え、訪れた人々を魅了しました。