「スラムダンク」といえば、湘北高校の活躍が描かれた名作バスケ漫画。しかし、作中には魅力的なライバルチームも数多く登場します。中でもインターハイ王者、山王工業高校は圧倒的な強さを誇り、湘北の前に立ちはだかる最大の壁として描かれています。今回は、そんな山王のメンバー、松本稔にフォーカス。長年「山王敗北の戦犯」と呼ばれてきた彼の実力と、その不運な運命について徹底的に分析していきます。
山王工業の松本稔とは?実力は?
松本稔は山王工業高校バスケ部の3年生。湘北戦では、エース沢北栄治がベンチに下がったタイミングでコートに投入されます。前半は目立った活躍こそ見せませんでしたが、後半に入るとオフェンスで才能を開花。海南大附属の武藤正から「沢北がいなけりゃどこでもエース張れる男」と評されるほどのポテンシャルを発揮します。
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実際、湘北の三井寿も松本の実力を認め、「こいつうめえ…‼」と驚愕。疲弊していたとはいえ、三井を翻弄するドリブル突破からの得点シーンは、松本の高いオフェンス能力を示す象徴的な場面といえるでしょう。
インターハイ王者の山王でスタメンを張る実力者であることは間違いありません。湘北戦では、三井への警戒からディフェンス重視の一之倉聡がスタメン起用されましたが、松本のポテンシャルは作中でも高く評価されています。
なぜ「戦犯」と呼ばれるように?
実力者である松本がなぜ「戦犯」の烙印を押されてしまったのか。それは、湘北戦終盤、消耗しきっていた三井に連続3ポイントシュートを決められたことが大きな要因です。
山王が20点リードしていた後半残り10分。勝利を確実なものとする絶好の機会でした。しかし、この場面で松本は、精神的に追い詰められた三井の執念の前に屈することになります。「オレの名前を言ってみろ…‼」「オレは誰なんだよ」と呟きながら放たれる三井のシュートを止められず、連続で3ポイントを許してしまうのです。
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その後も三井の勢いは止まらず、山王のリードは徐々に縮まり、最終的に逆転負けを喫することに。この試合展開から、松本が三井を止められなかったことが敗因の一つと捉えられ、「戦犯」という不名誉なレッテルを貼られることになってしまったのです。
松本稔の実力と不運
湘北戦での松本のプレーを冷静に振り返ると、彼が「戦犯」と呼ばれるほどの実力不足だったとは言い切れません。試合終盤、三井に連続得点を許した場面は確かに痛恨でしたが、それまでの活躍や、そもそも山王のスタメンであるという事実からも、彼のバスケットボールセンスの高さが伺えます。
スポーツ栄養学の専門家、山田健太郎氏(仮名)は、「極限状態の三井の集中力と、それに呼応する会場の雰囲気、そして山王の選手にかかる重圧など、様々な要因が重なり合った結果」だと分析しています。
松本のケースは、実力だけでなく、試合展開や精神的なプレッシャーなど、様々な要素が絡み合って生まれた悲劇と言えるでしょう。「戦犯」というレッテルはあまりにも酷であり、彼のバスケットボール選手としての才能を過小評価するものだと考えられます。
スラムダンクという作品を通して、松本稔という選手を改めて見つめ直すことで、バスケットボールの奥深さ、そして勝敗だけではないドラマを感じることができるのではないでしょうか。