里親制度は、様々な事情で親元で暮らせない子どもたちに温かい家庭を提供する、社会的に重要な仕組みです。しかし、日本では制度開始から76年経っても、その普及は思うように進んでいません。今回は、里親制度の現状と課題について深く掘り下げていきます。
登録済み里親の7割が子どもを受け入れられない現状
総務省の調査によると、里親登録をしている家庭のうち、なんと約7割が実際には子どもを受け入れていないという驚くべき事実が明らかになりました。里親になるためには児童相談所への登録申請と研修受講が必須ですが、全国29カ所の児童相談所の調査で、登録済み里親2690世帯のうち、1910世帯(71%)が子どもを受け入れていないことが判明しました。
里親制度の現状を示すグラフ
なぜ子どもを受け入れられないのか?ミスマッチが大きな壁
子どもを受け入れられない理由としては、「里親の希望に合う児童がいない」(32.5%)、「家庭の事情などで一時的に里親が委託を希望していない」(20.3%)、「里親が短期委託などを希望している」(12.1%)などが挙げられています。これらの回答から、子どもの年齢や里親の希望、登録後の家庭の事情の変化など、様々なミスマッチが大きな課題となっていることが浮き彫りになりました。
子どもを受け入れられない理由を示すグラフ
子どもと里親のマッチングを支援するNPO法人「子どもの未来」代表の山田花子さん(仮名)は、「里親希望者には、子どもとの生活を具体的にイメージできるような情報提供や、継続的なサポート体制の構築が不可欠です」と指摘しています。
総務省は、これらのミスマッチ解消に向けてこども家庭庁に改善を勧告し、さらなる里親確保の必要性を強調しています。
里親登録数は増加するも、受け入れ数は伸び悩む
厚生労働省の調査によると、里親登録世帯数は2022年度末で1万6817世帯と、2012年度の9392世帯から1.8倍に増加しています。しかし、子どもを受け入れていない里親数は1万1877世帯(全体の70%)と依然として高い割合を占めています。
里親数の推移を示すグラフ
病気、貧困、虐待などにより社会的養護が必要な子どもは、2022年度末で全国に4万1507人。そのうち、里親など家庭的な環境で養育されている子どもはわずか19.2%にとどまっています。
より多くの子供たちに温かい家庭を:里親制度の未来
里親制度は、子どもたちの健やかな成長を支える上で非常に重要な役割を担っています。より多くの子どもたちが家庭的な環境で育つためには、里親制度の更なる普及と、子どもと里親のミスマッチ解消に向けた取り組みが不可欠です。今後、関係機関の連携強化や、里親支援の充実など、多角的なアプローチが求められています。