ジャニーズ事務所を揺るがした性加害問題。なぜ長年、闇に葬られてきたのか?本記事では、NHKスペシャル「ジャニー喜多川 “アイドル帝国”の実像」に出演した田淵俊彦氏(元テレビ東京社員、桜美林大学教授)の視点から、メディアの責任、そして番組制作の裏側を紐解きます。
メディアの沈黙:巨大な「モンスター」を育てたのは誰か?
ジャニー喜多川氏による性加害は、長年にわたり放置されてきました。その背景には、メディア、特にテレビの責任があると田淵氏は指摘します。巨大な影響力を持つジャニーズ事務所。その「モンスター」を創り出し、利用し、そして利用される関係性の中で、メディアは見て見ぬふりを続けてきたのです。
ジャニー喜多川氏の死去を伝える街頭テレビ
田淵氏自身、NHKスペシャルへの出演を通して、この問題の根深さを改めて実感したと言います。番組制作の裏側には、様々な圧力や困難があったと推察されますが、それでも放送に漕ぎ着けた制作陣の勇気には敬意を表すべきでしょう。
NHKスペシャル出演の決意:学生たちへの思いと、ディレクターへの信頼
田淵氏がNHKスペシャルへの出演を決意した背景には、二つの理由がありました。一つは、大学教員として学生たちと接する中で芽生えた責任感。将来、同じような被害に遭う学生を出したくないという強い思いが、彼を突き動かしました。
もう一つは、番組ディレクター中川雄一朗氏への信頼です。「クローズアップ現代」でジャニーズ事務所を会見の場に引きずり出し、その後も被害者に寄り添う取材を続けてきた中川氏。その姿勢に共感し、信頼を寄せたことが、出演の決め手となりました。
ジャニーズ事務所の本社ビル
2024年3月にテレビ東京を退職し、大学教員となった田淵氏。同年1月に出版した『混沌時代の新・テレビ論』(ポプラ新書)では、ジャニーズ事務所との過去の関わりについても触れています。この著書がきっかけとなり、中川氏から連絡を受けたのは、2024年1月19日のことでした。
番組への葛藤:それでも伝えたい真実
田淵氏は、番組が制作陣の意図とは異なるものになってしまったと感じています。その理由については、今後、メディア研究者、そして大学教員としての立場から改めて検証していくと述べています。
性加害問題の真相究明は、まだ始まったばかりです。メディアの責任、そして被害者たちの声に真摯に向き合い、未来への教訓としていく必要があるでしょう。