エプスタイン事件:NY連邦地裁、トランプ政権の証言録開示要求を却下し批判

米東部ニューヨーク州の連邦地裁は20日、故ジェフリー・エプスタイン元被告に関する大陪審の証言録の開示を求める米司法省の申し立てを退けました。バーマン判事は、司法省が保有する膨大な資料に比べ、大陪審の証言録は「取るに足らない」と指摘。さらに、トランプ政権がこの申し立てを利用して「政府が持つ膨大な資料から世間の注目をそらそうとしている」と厳しく批判しました。この判断は、エプスタイン事件の真実解明を求める世論に一石を投じるものと見られます。

エプスタイン事件の背景と根強い陰謀論

米国の富豪であったジェフリー・エプスタイン氏は、2019年に少女らへの性的虐待や人身売買の罪で起訴され、勾留中に死亡しました。彼の死は自殺とされましたが、その直後から「著名人の『顧客リスト』が存在し、有力者による口封じのために殺害された」という陰謀論が根強く広まりました。特に、トランプ大統領の熱心な支持層である「MAGA(Make America Great Again)」派の一部では、この説が深く浸透しており、事件の全容解明を強く求めています。

連邦地裁の判断理由と政府の責任

ニューヨーク連邦地裁は、今回の却下理由として、大陪審の証言録が約70ページに過ぎないのに対し、米政府が保有する関連資料が10万ページにも及ぶ点を強調しました。バーマン判事は、証言録の開示要求が「世論の関心を(取るに足らない)証言録に向けるため」であるとし、証人保護の観点からも非公開が適切であると判断しました。地裁は、政府こそが自身の保有資料を公開するか否かを判断する「適切な当事者」であると指摘し、司法省が自らの責任を回避しようとしているかのような姿勢に疑問を呈しました。

エプスタイン事件の文書公開を求め、米ワシントンでトランプ政権に抗議する人々(2025年8月6日撮影、ロイター)エプスタイン事件の文書公開を求め、米ワシントンでトランプ政権に抗議する人々(2025年8月6日撮影、ロイター)

情報公開を巡るトランプ政権の変遷

トランプ政権は当初、エプスタイン事件に関する保有資料の情報公開に対して前向きな姿勢を示し、実際に一部の資料を公開したこともありました。しかし、7月に入ると一転して非公開へと方針を変更し、疑惑の「顧客リスト」の存在も否定したため、MAGA派の一部から激しい批判が噴出しました。これを受け、トランプ氏は同月、ボンディ司法長官に対し、「大陪審の全ての証言録」の公開を裁判所に求めるよう指示していました。しかし、今回の地裁の決定は、この指示に対する司法判断として注目されます。

今後の展望と関連動向

ニューヨーク州の連邦地裁だけでなく、南部フロリダ州の連邦地裁も、今回とは別の司法省による同様の申し立てを既に退けています。一方で、米司法省は22日から、下院監視・政府改革委員会に対し、保有する関連資料を順次提出する予定です。同委員会の要請に応じて提出されるこれらの資料は、最終的に公開される見込みであり、エプスタイン事件の全容解明に向けた新たな動きとして、今後の展開が注目されます。


参考文献

  • 米東部ニューヨーク州連邦地裁の決定に関する報道
  • エプスタイン事件に関する過去の報道
  • 米司法省および下院委員会の声明