アメリカ大統領選挙は、共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領に大差をつけ、132年ぶり2人目となる大統領返り咲きを果たしました。経済政策、人工妊娠中絶、移民問題など様々な論点が注目される中、CNNの出口調査では「民主主義」を重視する有権者が35%と最も多く、今回の選挙結果が民主主義の行方を占う重要な意味を持つことが改めて浮き彫りとなりました。しかし、皮肉にもトランプ氏の勝利後、アメリカ各紙では「民主主義の危機」を警告する声が上がっています。果たして、トランプ氏の再選はアメリカの民主主義にとってどのような危機をもたらすのでしょうか?
アメリカ民主主義の危機とは何か?
アメリカ国民の投票理由
選挙という民主主義の根幹を通して大統領が選出されたにも関わらず、「民主主義の危機」が叫ばれる現状。文化通訳でありシンガーソングライターのネルソン・バビンコイ氏は、トランプ氏のNATO脱退の可能性、ウクライナ支援の停止、中国との親密な関係による台湾情勢への影響など、世界的な民主主義国家への危機が続くと懸念を示しています。さらに、アメリカ国内においては三権分立の原則が揺らぎ、行政、立法、司法のバランスが崩れる可能性を指摘。まさに「試練の4年間」が始まるとの見解を示しました。
東京大学公共政策大学院教授の鈴木一人氏は、選挙の実施だけでは真の民主主義とは言えず、集会や言論の自由といった自由主義の保障が不可欠であると強調。トランプ前大統領やイーロン・マスク氏によるTwitter(現X)におけるヘイトスピーチ規制緩和を例に挙げ、言論の自由の名の下に民主主義を攻撃する行為が容認される風潮への危機感を表明しました。鈴木教授は、「民主主義の境界線はどこにあるのか」という問いを投げかけ、ヘイトスピーチのような有害な言論も自由として認めるべきか、あるいは制限すべきかという議論の必要性を訴えています。行き過ぎた自由は、民主主義の土台を揺るがす危険性を孕んでいると言えるでしょう。
トランプ前大統領
バビンコイ氏は、XをはじめとするSNSやネットニュースにおけるフィルターバブルの危険性についても言及。アルゴリズムによってユーザーの嗜好に合わせた情報のみが表示されることで、多様な意見に触れる機会が失われ、偏った情報に基づいた判断をしてしまうリスクが高まっていると指摘。ネットリテラシーの向上と、フィルターバブルの外側に目を向けることの重要性を訴えました。真に民主的な社会を実現するためには、多様な情報に触れ、批判的に思考する能力を養うことが不可欠です。