マンガ『私が見た未来』による「7月5日に大災難が起きる」という予言が、SNSなどで広まり日本中で不安を煽りました。しかし、フタを開けてみれば何も特別なことは起こらず、予言は物理的には外れた形です。しかし、この騒動は予期せぬ形で日本の観光産業、特にインバウンド需要に影を落としています。
「大災害は2011年3月」で注目された予言
たつき諒氏のマンガ『私が見た未来』は、1999年刊行ながら表紙に「大災害は2011年3月」と記されていたことから、東日本大震災を予言したとして注目を集めました。この作品が完全版として復刊されると、SNSやYouTubeでその内容が再び拡散。「2025年7月5日に何かが起こる」という新たな予言が独り歩きし、「南海トラフ地震に備えて当日は東京を離れる」といった具体的な行動をとる人も現れるなど、世の中に大きな不安をもたらしました。
東日本大震災を予言したと話題になったマンガ『私が見た未来』の表紙
結局、何も起きなかった7月5日
事前の騒ぎとは裏腹に、7月5日は平穏に過ぎ去りました。たまたま同時期にトカラ列島周辺で地震が相次いではいましたが、予測されていたような大規模な「大災難」は発生せず、日本の多くの地域で普段通りの一日となりました。
7月5日、予言された災害なく平穏に過ぎた街並み
予言騒動が招いたインバウンドへの深刻な影響
物理的な大災難は起きませんでしたが、この予言騒動は日本経済に、特に外国人観光客(インバウンド)に関連する分野で具体的な影響を与えました。6月下旬から7月第1週にかけて、都心飲食店からは「外国人客半減、特にアジア圏が激減」との声。渋谷の居酒屋経営者は夏に向けて増やした鮮魚の仕入れが無駄になったと嘆きました。
特に深刻だったのは香港からの渡航者への影響です。現地の著名な風水師が予言に言及し渡航自粛を呼びかけたことで、日本行きの香港便が相次いで減便となり、運航再開の見通しは立っていません。インバウンドアナリストの宮本大氏は、訪日中国人の消費額から試算すると、7月の訪日中国人が仮に20%減るだけで約280億円の損失になると指摘。さらに野村総合研究所は、中国を含むアジア諸国からの旅行控えによる経済的損失を「マイナス5600億円」と試算しています。このように、予言された形とは異なりますが、社会的な不安が結果として経済的な「大災難」を引き起こしたとも言えます。
7月5日の大災難予言は物理的には外れましたが、社会的な不安が経済に打撃を与えました。特にインバウンドへの影響は深刻で、情報拡散が経済活動に与える波紋の大きさを改めて示しました。