都会の喧騒を離れ、自然豊かな地方でのスローライフに憧れる人は少なくないでしょう。韓国でも、ソウルの一極集中を脱し、地方移住を選ぶ人が増えています。この記事では、地方移住を選んだ家族のストーリーを通して、韓国の地方移住ブームの背景や魅力、そして課題について探っていきます。
ソウル脱出:家族の幸せを求めて
江原道襄陽郡の山間にある民宿「襄陽に生きる」。ここでは、全玉浪さん(45歳)と夫の吳大勲さん(41歳)が、3人の子どもたちと笑顔で暮らしています。ソウルで飲食店を経営していた一家は、子どもたちの健康と家族の時間を大切にしたいという思いから、2019年に襄陽郡へ移住しました。
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ソウルでは、PM2.5による大気汚染で子どもたちの体調が悪化することがしばしばありました。全さんは「お金よりも家族との時間」を重視するようになり、襄陽郡の美しい自然と澄んだ空気に惹かれて移住を決意しました。
地方移住の現実:喜びと challenges
地方移住は決して楽ではありませんでした。縁もゆかりもない土地での仕事探しは困難を極め、偏見の目にさらされることもあったといいます。キャンプ場の管理人やサーフィン講師など様々な仕事を経験しながら、ようやく民宿経営という理想の働き方を見つけました。
地方移住のハードルは、仕事探しだけではありません。学歴社会の韓国では、教育問題も大きな壁となります。ソウルの大企業への就職を目指す子どもたちは、幼い頃から塾通いが当たり前。地方の教育環境に不安を感じる親も多いでしょう。
しかし、吳さんは「大企業や有名大学が全てではない」と断言します。「子どもたちが本当に好きなこと、幸せだと感じることを発見できるような教育こそ大切」だと考えています。
地方移住ブームの背景:政府の取り組みと社会の変化
韓国政府も、地方移住を促進するための政策を積極的に展開しています。若者の地方移住や定着を支援するための予算を大幅に増額し、地方創生に力を入れています。
韓国銀行の報告書によると、韓国の人口の半数以上がソウルとその周辺地域に集中しています。有名大学への進学や大企業への就職を目指して、多くの若者が首都圏に流入している現状が浮き彫りになっています。
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このような状況の中、全さん一家のように、自分らしい生き方を見つけるために地方移住を選ぶ人々が増えています。 「周りの価値観ではなく、自分の人生を自分で切り開くことが大切」という吳さんの言葉は、まさに地方移住ブームを象徴していると言えるでしょう。
自分らしい生き方を見つける
全さん一家のストーリーは、韓国の地方移住の現状を映し出すとともに、私たちに大切な問いを投げかけています。「本当に大切なものは何か?」都会の便利さと引き換えに、何を失っているのか。地方移住は、自分らしい生き方、そして真の幸せを探すための、一つの選択肢なのかもしれません。