トランプ氏、対露強硬姿勢に転換:50日以内の停戦合意不成立で「二次関税」発動へ

対ロシア強硬姿勢に転じたトランプ大統領が50日以内の停戦合意を要求し、不成立の場合には「二次関税」を発動すると警告している様子。対ロシア強硬姿勢に転じたトランプ大統領が50日以内の停戦合意を要求し、不成立の場合には「二次関税」を発動すると警告している様子。

アメリカのドナルド・トランプ大統領が、これまでとは一転して対ロシア強硬姿勢に転じ、ロシアが50日以内にウクライナとの停戦合意に応じなければ、同国と取引のある国々に対して「二次関税」を発動する方針を表明した。この方針転換の背景には何があるのか、その舞台裏が明らかになってきた。

「公園の喧嘩」から一転、対露強硬姿勢への転換点

トランプ大統領はこれまで、ロシアとウクライナの戦争を「終結させる」と繰り返し公言してきた。しかし、6月4日のロシアのプーチン大統領との電話会談では、戦闘を「公園での子どものけんか」にたとえたと報じられている。翌日の会見で自らこの発言を認め、「しばらく戦わせてから引き離したほうがいいかもしれない」と述べ、これまで意欲を示してきた停戦仲介を見送る可能性さえ示唆した。

この姿勢がなぜ急変したのか。その大きなきっかけとなったのが、トランプ氏が2期目の就任後6回目となるプーチン大統領との電話会談を今月3日に行ったことだ。アメリカのニュースサイト「アクシオス」によると、この会談でプーチン大統領は、今後60日間で、ロシアが部分的に占領しているウクライナのルガンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン各州の行政境界線までの領土掌握に向けた新たな攻勢をかける意向を示唆したという。この発言は、東部・南部4州の完全掌握を目指すものと受け取れる。

ウクライナ侵攻に対するトランプ大統領の初期の姿勢が、その後の政策転換によってどのように変化したかを示す図。ウクライナ侵攻に対するトランプ大統領の初期の姿勢が、その後の政策転換によってどのように変化したかを示す図。

さらに、トランプ大統領は8日にはプーチン大統領について「でたらめばかり言って多くの人を殺している」と発言し、強い不満と苛立ちを募らせていた。ウクライナ側によれば、同じ日からロシアは一日あたりの攻撃としては過去最多となる728機のドローンや弾道ミサイルなどでウクライナ全土を攻撃したという。

「二次関税」と「兵器支援」:トランプ氏の新たな圧力戦略

こうした一連の動きを受け、トランプ大統領は14日、対ロシア圧力を強化する新たな方針を公表した。その内容は以下の2点に集約される。

  1. 兵器支援の再開: アメリカ製の兵器を北大西洋条約機構(NATO)加盟国が購入し、ウクライナに送るというもので、防空システム「パトリオット」などがその対象に含まれる。
  2. ロシアへの制裁関税: ロシアが50日以内に停戦に合意しなければ、ロシアと取引を行う国々に対して100%の「二次関税」を課すと表明した。

ロシアのプーチン大統領が「60日で攻勢」をかけると発言したことを示すイメージ。ウクライナ侵攻におけるロシアの意図を浮き彫りにする。ロシアのプーチン大統領が「60日で攻勢」をかけると発言したことを示すイメージ。ウクライナ侵攻におけるロシアの意図を浮き彫りにする。

期限の「50日」が示す戦略的意図

ここで注目すべきは、トランプ大統領が示した「50日以内」という停戦期限だ。プーチン大統領が「新たな攻勢をかける」とした「60日間」の期限が9月1日までであるのに対し、トランプ氏の「50日以内」の期限は9月2日までと、日付が非常に近い。

この類似性について、笹川平和財団の畔蒜泰助氏は、「トランプ大統領は9月初めまで停戦合意を先送りし、ロシアに時間を与えているのではないか」と指摘している。これは、トランプ氏がプーチン大統領の意図をくみ取り、期限を設定した可能性を示唆する見方でもある。

トランプ大統領が提案した「50日以内で停戦」の期限と、その戦略的な狙いを示す概念図。プーチン大統領の60日間の攻勢計画との関連性が示唆される。トランプ大統領が提案した「50日以内で停戦」の期限と、その戦略的な狙いを示す概念図。プーチン大統領の60日間の攻勢計画との関連性が示唆される。

トランプ大統領の突然の対露強硬姿勢への転換は、プーチン大統領の新たな攻勢計画に対する明確な反応であり、同時に複雑な戦略的計算が働いている可能性も示している。今後の国際情勢の動向、特に9月初頭までのロシアとウクライナの動き、そしてアメリカの次なる措置が注視される。

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