古代エジプトの神秘的な世界への扉が再び開かれた。4000年前の墓から新たな埋葬室が発掘され、ミイラ化した女司祭の遺体と豪華な装飾の棺が発見されたのだ。この世紀の大発見は、古代エジプトの文化、宗教、そして女性の地位について新たな光を投げかける。
ジェファイ・ハピ1世の墓で驚きの発見
エジプト、アシュートにあるジェファイ・ハピ1世の墓。その内部で、これまで知られていなかった埋葬室が発見された。ベルリン自由大学のヨヘム・カール教授率いる研究チームが、2024年8月から9月にかけて行った発掘調査で見つかったこの埋葬室。中には、華やかな装飾が施された棺が安置されていた。
二重構造の棺
そして、この棺を開けると、さらに別の棺が現れた。まるでマトリョーシカのような二重構造。内側の棺には、ミイラ化した古代エジプトの女司祭の遺骨が眠っていた。
女司祭イディの物語
研究チームは、この女司祭がジェファイ・ハピ1世の一人娘イディではないかと推測している。ジェファイ・ハピ1世は古代エジプトで神格化された指導者であり、彼の墓から娘の遺骨が発見されたのは前例のないことだ。墓の建造は紀元前1880年頃と推定され、4000年の時を超えて現代にその姿を現した。
イディの棺には、死後の世界の旅を描いた文章や絵が描かれており、古代エジプト人の死生観を垣間見ることができる。遺体は臓器が取り除かれ、丁寧にミイラ化されていた。棺の中には、短剣や木製の像など、死後の世界で役立つと信じられていた副葬品も共に埋葬されていた。
棺に描かれた死後の世界の旅
遺骨の調査から、イディは足に先天的な障害を抱えており、40歳前に亡くなったと推測されている。古代エジプトの女神ハトルの女司祭として仕えていた彼女は、どのような人生を送ったのだろうか。
古代エジプト研究の新展開
カール教授は、今回の発見は美学的、科学的にも特別な意味を持つと語る。古代エジプトにおける女性の地位や知識の伝達に関する研究に新たな展開をもたらすことが期待されている。
二つの棺は、いずれもエジプト外部から調達された木材で作られているとみられ、当時の交易や文化交流についても貴重な情報を与えてくれるだろう。発掘された遺物は、保存作業を経てエジプト観光・考古省に引き渡される予定だ。
古代の謎を紐解く旅
4000年前の女司祭イディの物語は、古代エジプトの神秘と魅力を改めて私たちに教えてくれる。今後の研究の進展により、さらに多くの謎が解き明かされることを期待したい。