韓国で、中国人留学生による軍事施設の違法撮影が相次いで発覚し、波紋を広げています。釜山では留学生3人が軍事基地をドローンで撮影していた容疑で逮捕され、ソウルでも国情院の建物をドローン撮影した中国人が摘発されました。これらの事件は、ただの好奇心の範疇を超え、組織的な犯行である可能性も浮上しています。
釜山での事件:2年間、500枚以上の写真
釜山警察庁は6月、米空母「セオドア・ルーズベルト」を含む海軍作戦司令部釜山作戦基地をドローンで撮影した中国人留学生3人を逮捕しました。当初「ただの好奇心」と供述していた彼らですが、警察の捜査により、少なくとも2年前から軍事施設を撮影していたことが判明。500枚を超える写真や動画が押収され、中国公安と推定される電話番号も保存されていたといいます。
釜山作戦基地近くの山からドローンを飛ばす様子を想像図
ドローン飛行場所の綿密な下見も
彼らは2022年9月からドローン飛行に適した場所を物色していた形跡があり、周到に準備された犯行である可能性が高まっています。韓国の軍事専門家、パク・ミンチョル氏(仮名)は「このような綿密な下見は、単なる好奇心では説明がつきにくい。背に何らかの組織が関与している可能性を視野に入れるべきだ」と指摘しています。
ソウルでの事件:国情院の建物も標的に
ソウルでは今月、国情院の建物をドローンで撮影した中国人が摘発されました。この人物は献仁陵の撮影を目的としていたと主張していますが、入国後すぐに献仁陵に向かったことや、国情院の建物も撮影されていたことから、当局は組織的な犯行の可能性を疑っています。
スパイ防止法の課題
これらの事件を受け、韓国のスパイ防止法の不備も指摘されています。現行法では「敵国」を北朝鮮に限定しているため、北朝鮮以外の国への情報漏洩はスパイ罪に問えない可能性があります。法改正の必要性を訴える声も高まっており、今後の動向が注目されます。
今後の捜査の行方と日韓連携の重要性
警察は両事件の関連性や背後関係を捜査中ですが、中国当局の関与も視野に入れていると報じられています。国際的な情報網を使った組織的な犯行の可能性も否定できず、真相解明が待たれます。日本も同様の事案に警戒が必要であり、日韓の情報共有と連携強化が重要性を増しています。韓国の安全保障専門家、イ・スンヒョン氏(仮名)は「中国の海洋進出を背景に、東アジアの安全保障環境は厳しさを増している。日韓両国は緊密に連携し、情報収集・分析能力の向上に努めるべきだ」と述べています。