日本は深刻な少子化問題に直面しています。厚生労働省の人口動態統計によると、2024年上半期の出生数は32万9998人。このペースだと年間70万人を割り込む可能性が非常に高く、過去最少を更新する見込みです。政府は「こども未来戦略方針」に基づき、3.6兆円規模の予算で児童手当の拡充や出産費用への保険適用など様々な対策を打ち出していますが、出生数は減少の一途を辿っています。果たして、お金をかければ子供は増えるのでしょうか?本当に必要な少子化対策とは一体何なのでしょうか?この記事では、様々な視点からこの問題を深く掘り下げていきます。
財政支援策の効果と限界
alt="小黒一正教授の第3子以降1000万円支給案についての討論の様子"
法政大学経済学部教授の小黒一正氏は、第3子以降への出産一時金1000万円支給という大胆な案を提示しています。小黒氏は、結婚する夫婦の数はほぼ一定である一方、出生数が減少している現状を踏まえ、子供を3人以上持つ家庭を増やすことが人口減少の歯止めになると主張。18歳までに国が子供一人当たりにかける費用は約750万円ですが、これを生まれた時に一括で支給することで、より大きな効果が期待できると述べています。10万人増加で1兆円、20万人増加で2兆円となり、「こども未来戦略方針」の予算内で収まる試算を示し、「効果がなければやめればいい」というスタンスです。
しかし、この案には異論もあります。ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏は、この政策は既婚者対策に偏っており、未婚者への効果は期待できないと指摘。また、3人目の子育てを決断するには様々な要因が絡み合っており、金銭的なインセンティブだけでは解決できないと述べています。子育て支援の現場で働く専門家(氏名非公開)も、「経済的な支援は重要だが、それだけでは十分ではない。子育ての不安や負担を軽減するためのきめ細やかなサポート体制の構築が不可欠」と指摘しています。
真の少子化対策とは?社会構造改革の必要性
alt="出生数減少のニュース報道"
政府の「こども未来戦略会議」委員を務めたTAZ代表の高橋祥子氏は、「これまでの政策で結果が出ていないことが全て」と指摘。若者の経済状況の改善、仕事と育児の両立を困難にする社会構造、育児支援の不足、これら3つの課題解決が重要だと訴えています。海外では女性の労働参加率の上昇と出生率の上昇は正の相関がある一方、日本では逆の傾向が見られるのは、仕事か育児かの二者択一を迫られる社会構造が原因だと分析しています。
少子化対策は、単なる財政支援ではなく、社会全体の構造改革が不可欠です。子育てしやすい環境づくり、ワークライフバランスの実現、そして未来への希望を持てる社会の実現こそが、真の少子化対策と言えるでしょう。
まとめ:未来への投資
少子化問題は、日本の未来を左右する重要な課題です。財政支援は重要な要素ですが、それだけでは解決できません。子育てしやすい社会、誰もが安心して子供を産み育てられる社会の実現に向けて、多角的な視点からの取り組みが求められています。