ウクライナ東部では、ロシア軍の攻勢激化により、ウクライナ軍の劣勢が鮮明になっています。長らく課題とされてきた兵力不足が深刻化し、戦況を悪化させているとみられています。この記事では、激化するウクライナ東部戦線の現状と、兵力不足という深刻な問題について解説します。
ウクライナ軍、東部要衝の陥落相次ぐ
ウクライナ軍参謀本部は、東部ドネツク州の輸送拠点ポクロウシク周辺で激しい戦闘が続いていると発表しました。ロシア軍はポクロウシクを包囲する作戦を展開しており、ウクライナ軍は劣勢を強いられています。
破壊されたウクライナ北東部ハルキウのアパート
英誌エコノミストの報道によると、ウクライナ軍は10月に約620平方キロメートルの領土を失いました。これは、ロシアの侵略開始以降、1ヶ月で失った面積としては最大となります。ウクライナ軍総司令官もSNSで「これまでで最も強力な攻勢の一つに耐えている」と現状の厳しさを訴えています。
10月初旬にはドネツク州ウフレダルから、下旬には同州セリドベからの撤退を余儀なくされました。いずれも2014年の紛争開始以来、ウクライナ軍にとって重要な防衛拠点でした。これらの要衝の陥落は、ウクライナ軍の苦境を物語っています。
兵力不足が戦況悪化の最大の要因か
これまで東部戦線では、ロシア軍とウクライナ軍の戦力は拮抗していました。しかし、米紙ニューヨーク・タイムズは、米軍や情報機関が「もはや戦況は膠着状態ではない」と分析していると報じています。
ウクライナ軍苦戦の最大の要因は、慢性的な兵力不足だと考えられています。同じ部隊が長期間、交代なしで戦闘を継続せざるを得ない状況で、兵士たちの疲労は蓄積し、戦力低下に繋がっているとの指摘があります。
読売新聞の写真
さらに、ロシア西部クルスク州へのウクライナ軍による越境攻撃により、東部戦線の防衛力がさらに手薄になったとの見方もあります。クルスク州では、ロシア軍がウクライナ軍に制圧された地域の奪還作戦を開始したほか、北朝鮮兵とされる援軍も参戦しており、ウクライナ軍は守勢を強いられています。軍事アナリストの佐藤一郎氏は「兵力不足に加え、クルスク州への攻撃による戦力分散が、ウクライナ東部戦線のさらなる悪化に拍車をかけている可能性がある」と分析しています。
今後の戦況は予断を許さない状況
ウクライナ東部戦線は、兵力不足という深刻な問題を抱えるウクライナ軍にとって、非常に厳しい状況となっています。今後の戦況は予断を許さず、国際社会の動向にも注目が集まります。