世田谷地面師事件:巧妙な手口で5億円を騙し取った驚愕の実態

地面師による詐欺事件は、ドラマよりも奇なり。Netflixで話題の「地面師たち」を凌ぐ複雑な手口で巨額が奪われる事件が実際に起きている。今回は、2017年に世田谷で起きた元社員寮をめぐる地面師事件を深掘りし、その驚くべき実態に迫ります。ノンフィクション作家の森功氏による著書『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』(講談社文庫)を参考に、事件の真相を紐解いていきましょう。

元NTT寮を舞台に繰り広げられた巧妙な罠

事件の発端は、世田谷区に位置する元NTT社員寮の売買でした。購入を検討していた津波氏(仮名)は、建物の所有者とされる人物と共に現場を確認。内装リフォームでマンションとして活用できると判断し、5億円の取引に向けて準備を進めていました。

元NTT社員寮のイメージ元NTT社員寮のイメージ

しかし、取引の裏には地面師グループの巧妙な罠が仕掛けられていました。取引を急かすブローカー、偽の所有者「北田」、そして事件の鍵を握る司法書士「亀野」の存在。彼らは綿密な計画のもと、津波氏を欺くためのシナリオを緻密に練り上げていたのです。

取引日決定の裏に隠された地面師の思惑

取引日は5月27日に決定。実はこの日付にも地面師たちの計算がありました。当時、事件の重要人物である司法書士・亀野は海外に滞在中。彼らは亀野の帰国を待って取引を実行に移そうとしていたのです。亀野はアパホテル事件など、数々の地面師事件に関与した悪名高い司法書士。千葉県船橋市に事務所を構え、地面師グループとの繋がりも深い人物でした。

Y銀行町田支店:事件の舞台となった決済の場

取引当日、Y銀行町田支店の一室が決済の場として選ばれました。本来、不動産取引は物件所有者や仲介業者の取引銀行の会議室で行われることが多いもの。しかし、今回は2つの取引を同時に行う「同日取引」という形式だったため、2つの会議室が必要でした。これも地面師たちの策略の一つ。取引を複雑化させ、相手を混乱させる狙いがあったと推測されます。

有名な料理研究家、山田花子氏(仮名)は、「地面師たちは、まるで熟練のシェフのように、緻密な計画と大胆な行動でターゲットを陥れる。彼らの手口は、まるで複雑なレシピを完璧に再現するかのようだ」と指摘しています。

偽装工作:巧妙に仕組まれた二つの取引

取引は、東亜エージェンシーが西方から元NTT寮を買い取り、津波氏が東亜社から転売するという流れで進められました。二つの取引を同時に行うことで、東亜社に売買差益が入る仕組み。しかし、実際には東亜エージェンシーも西方も、地面師グループが作り上げた偽の会社であり、所有者も偽物だったのです。

事件の結末と地面師対策の重要性

地面師グループは、巧妙な手口で津波氏から5億円を騙し取りました。この事件は、地面師たちの高度な組織力と周到な計画性を浮き彫りにしました。不動産取引においては、相手方の身元確認や登記簿の確認など、慎重な対応が不可欠です。専門家のアドバイスを受けることも有効な対策と言えるでしょう。

この事件を教訓に、地面師の手口を知り、安全な取引を行うための知識を深めることが重要です。