スーパー業界に暗雲、節約志向の消費者に値上げ転嫁できず赤字転落

消費者の節約志向が高まる中、食品スーパー業界は苦境に立たされています。仕入れ原価の高騰が続く一方で、値上げを十分に転嫁できない状況が、大手スーパーの業績を直撃しているのです。

スーパー大手、中間決算で赤字転落相次ぐ

2025年2月期中間決算では、大手スーパーの赤字転落が相次ぎました。首都圏で展開するイオン傘下のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)は、6億円の営業赤字を計上。売上高は前年同期比1.6%増の3583億円と増収だったものの、利益は確保できませんでした。

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地方スーパーも厳しい状況です。山形県でトップシェアを誇るヤマザワも、営業損益が6億円の赤字に転落。イズミ、アークスなど、各地のスーパーも減益傾向にあります。

節約志向と原価高騰の板挟み

スーパー業界の苦境は、消費者の節約志向と原価高騰という二つの要因に挟まれていることが原因です。帝国データバンクによると、2024年も1万3000品目以上の値上げが予想されています。特に、豚肉などの生鮮品の価格高騰は顕著で、スーパーの仕入れ値を圧迫しています。

あるスーパー幹部は「豚肉の仕入れ値は昨年から1.5倍ほどになっている」と嘆きます。豚肉はスーパーの主力商品であり、価格変動は消費者の購買意欲に大きく影響します。しかし、値上げをそのまま店頭価格に反映することは容易ではありません。

消費者の間では、日常的な支出を抑える一方で、特別なイベントや祝日にはお金を使う傾向が強まっています。この「消費の二極化」はスーパー業界にとって大きな課題となっています。

高付加価値商品が売れず、粗利率悪化

昨年は高付加価値の総菜が好調でしたが、今年は節約志向の消費者に売れ行きが鈍く、廃棄ロスや見切り販売が増加。結果として、粗利率の悪化につながっています。

食品スーパーの平均的な営業利益率は2~3%と低く、わずかな粗利率の変動が業績に大きな影響を与えます。仕入れ値の上昇分を価格に転嫁できない現状は、スーパー経営を圧迫する大きな要因となっています。

専門家の見解

食品流通コンサルタントの山田一郎氏は、「消費者の節約志向が強まる中、スーパーは価格戦略の見直しを迫られている。高品質、低価格のプライベートブランド商品の拡充や、効率的な物流システムの構築など、抜本的な改革が必要だ」と指摘しています。

今後の展望

厳しい経営環境が続く中、スーパー業界は生き残りをかけて、様々な対策を模索しています。消費者のニーズを的確に捉え、新たな価値を提供できるかが、今後のカギとなるでしょう。