ヒグマ駆除問題:揺らぐハンターと自治体の関係、迫られる法改正

近年、日本各地でクマによる人身被害が増加傾向にあります。特に北海道では、ヒグマによる被害が深刻化しており、ハンターと自治体の連携が重要な課題となっています。しかし、現状の法律や制度では、迅速かつ効果的な対策が難しく、関係者たちの苦悩が深まっているのです。

ヒグマ駆除の現状:増加する被害とハンターの苦悩

環境省のデータによると、クマによる人身被害は2022年に75人、2023年には219人と急増しました。2024年は11月6日時点で75人と、前年比では減少傾向にありますが、依然として予断を許さない状況です。特に冬眠前のこの時期は、クマが活発に活動するため、更なる注意が必要です。

北海道では、猟友会のハンターがボランティアとしてヒグマ駆除に尽力してきました。しかし、市街地でヒグマを駆除したハンターが、住宅方向への発砲を理由に猟銃所持許可を取り消された事例が発生。この判決を不服としたハンターは裁判を起こしましたが、札幌高等裁判所は道の公安委員会の処分を認める判決を下しました。

ヒグマの画像ヒグマの画像

この判決は、ハンターたちの間に大きな波紋を広げ、ヒグマ駆除への意欲を低下させる要因となっています。「命をかけて駆除にあたるハンターが、不当なリスクを負うべきではない」という声が上がり、北海道猟友会は自治体からのヒグマ駆除要請に原則応じない方針を検討し始めました。

法律の壁:市街地での駆除を阻む鳥獣保護管理法

現状の鳥獣保護管理法では、住居集合地域での銃猟が禁止されています。つまり、市街地でクマが出没した場合、たとえ緊急事態であっても、法律上は駆除が難しい状況なのです。これまでの市街地での駆除は、緊急避難的な対応に過ぎなかったと言えるでしょう。

クマ対策イメージクマ対策イメージ

クマ対策の専門家である佐藤一郎氏(仮名)は、「現状の法律では、市街地でのクマ対策は限界がある。一刻も早く法改正を行い、より実効性のある対策を講じる必要がある」と指摘しています。

2月には環境省の「クマ類保護及び管理に関する検討会」で鳥獣保護管理法の改正が提言されましたが、11月現在も法改正には至っていません。この遅延が、ヒグマ駆除の現場に混乱と不安をもたらしているのです。

今後の展望:法改正と新たな対策の必要性

ヒグマによる人身被害を防ぐためには、ハンターと自治体の連携強化、そして法改正による柔軟な対応が不可欠です。市街地での駆除を可能にする法整備、ハンターの安全を確保する制度の構築など、多角的な対策が求められています。

クマ対策のゴールを明確化し、数値目標を設定してPDCAサイクルを回すことで、より効果的な対策を推進していく必要があるでしょう。また、地域住民への啓発活動やクマの生息域管理など、駆除以外の対策も重要です。

ヒグマとの共存を目指しつつ、人々の安全を守るためには、関係者全員が問題意識を共有し、協力して対策を進めていくことが重要です。