暴力団員更生支援NPO法人「五仁會」で広報を務める西村まこさんは、かつて「日本初の女ヤクザ」として名を馳せた異色の経歴を持つ。薬物依存の闇を経験した彼女が、自らの壮絶な過去を赤裸々に綴る。今回は、著書『「女ヤクザ」とよばれて ヤクザも恐れた「悪魔の子」の一代記』(清談社Publico)から一部抜粋し、ヤクザ時代の「シノギ」の実態と、薬物依存の恐ろしさについてお届けする。
ヤクザのシノギ:債権回収とシャブの売買
ヤクザの日常的なシノギの一つが、債権回収だ。商店主などから依頼を受け、債務者から金銭を回収する。複数人で債務者を囲み、高圧的な態度で迫ることで、相手を威圧し、金銭を回収する。回収した金額の半分を依頼主に渡し、残りは自分たちの取り分とする。一見すると簡単な仕事に思えるが、中には計画的に逃げる債務者もいるため、必ずしも成功するとは限らない。夜逃げされたり、住所が偽物だったりと、苦労することも多かった。
alt 元女ヤクザが語る、債権回収の現場。逃げる債務者との攻防も少なくなかった。
もう一つのシノギは、シャブの売買だ。西村さんは、身内ではなく他の組の人間にシャブを販売していた。顧客は20~30人ほど。関東の質の良いシャブを他よりも安く提供していたため、人気があったという。しかし、中には代金を踏み倒そうとする客もおり、トラブルも少なくなかった。
シャブ漬けの日々:終わりなき悪循環
当時の携帯電話はまだ普及しておらず、ポケベルや事務所の電話で注文を受けていた。売買は非常にいい加減で、1グラム1万円のシャブを、0.3グラムで1万円で売ることもあったという。西村さん自身も常習的にシャブを使用しており、面倒な取引を避けるため、いい加減な対応をしていた。
組では、事務所の奥の部屋で兄貴分が仕入れたシャブを小分けにしてパケ詰めする作業が行われていた。天秤でシャブをはかり、ビニールのパケに小分けし、割り箸で挟んでライターで封をする。この単調な作業は、シャブで朦朧とした状態でなければ続けられないほど、過酷なものだった。数人の組員が額を寄せ合って黙々と作業する様子は、まるで家内工業のようだったという。
西村さんは懲役刑で服役中にシャブを断つことができたが、出所後すぐに同僚から勧められ、再びシャブに手を出してしまった。組ではシャブが無料で手に入るため、依存から抜け出すことは容易ではなかった。
薬物依存の恐怖:更生への道
薬物依存の恐ろしさは、一度ハマると抜け出すのが非常に難しいことにある。西村さんのように、更生を誓っても、周囲の環境や誘惑に負けてしまうケースは少なくない。薬物依存は、本人だけでなく、家族や社会全体にも深刻な影響を与える。
西村さんは、自身の経験を通して、薬物依存の恐ろしさを訴え続けている。彼女が語る生々しい体験は、多くの人々に警鐘を鳴らし、薬物問題の深刻さを改めて認識させるだろう。
まとめ:更生への希望と未来
元女ヤクザ、西村まこさんの壮絶な人生は、薬物依存の闇と更生への道のりを鮮明に映し出す。彼女が伝えるメッセージは、薬物問題の解決に向けて、社会全体で取り組むべき課題を提起している。今、彼女はNPO法人「五仁會」で広報として活躍し、過去の経験を活かして、暴力団員や非行少年の更生支援に尽力している。彼女の更生ストーリーは、多くの人々に希望と勇気を与え、未来への道を照らし出すだろう。