群馬県桐生市で、中学3年の男子生徒(15)が父親(48)を刺したとして逮捕される衝撃的な事件が発生しました。8月14日夜に生徒本人が交番に出頭し、翌15日、群馬県警は殺人容疑で生徒を逮捕したと発表。刺された父親は医師で、自宅で首や腰など約10カ所を刃物で刺され死亡しているのが発見されました。この家庭では約1ヶ月前にも警察が出動する騒ぎが起きており、県警は父子間のトラブルが事件につながった可能性について慎重に捜査を進めています。
群馬県桐生市で発生した医師殺害事件の現場周辺を捜査する警察官の様子
事件の経緯と現場の状況
県警によると、男子生徒は14日午後10時過ぎ、JR桐生駅前の交番に「父親を刺した」と自首しました。警察官が自宅に駆けつけたところ、父親はすでに死亡していました。捜査関係者によると、自宅からは包丁が見つかっており、これが凶器とみられています。父親の遺体には首や腹部を中心に約10カ所の刺し傷があり、生徒は容疑を認めて「13日に父親を刺した」と供述しているとのことです。
事件当時、男子生徒は両親と妹の4人暮らしでしたが、母親と妹は県外の実家に帰省しており、自宅には父親と生徒の2人だけだったとみられています。現場はJR桐生駅から徒歩約15分の閑静な住宅街に位置します。近隣住民は13日頃の異変には気づかなかったと話しており、ある60代の男性は「14日夜10時半頃にサイレンが聞こえ、救急車と消防車が来た。警察官もいて、『泥棒ではないんですが…』という説明を受けたが、普段から言い争う声や物が落ちる音などは聞いたことがない」と証言しています。
被害者とその家族像:希薄な近所付き合い
亡くなった父親Aさんは2003年に福島県内の医科大学を卒業し、精神科の専門医として県内の病院に勤務していたとみられています。事件現場となった自宅は3年前に新築されたばかりで、一家はその際に引っ越してきました。
群馬県桐生市に建てられた築3年の新しい自宅、被害者一家が暮らしていた場所
近所の住民からは、被害者家族と地域社会との交流が希薄だった様子がうかがえます。ある70代の男性は、被害者の実家が元々現場のそばにあり、祖父の代から近所付き合いが少なかったと語ります。祖父の死後、更地だった土地に新しい家が建ち、被害者一家が住み始めたといいます。別の60代男性は、被害者の父親が亡くなった際も近隣住民は気づかず、弔問を申し出た組長も断られたというエピソードを明かし、「あの一軒だけベールに包まれていたみたいだ」と表現しました。また、40代の女性は亡くなった父親Aさんについて「細身で無口な男性。挨拶しても会釈する程度で、町内会の用事でも最低限の会話しかしない」と印象を語っています。
事件を予兆した家庭内トラブルと容疑者の素顔
近所付き合いが少なく、普段は物音も聞こえなかった被害者宅で、約1ヶ月前には異変があったことが大手紙社会部記者によって報じられています。先月、パトカーが出動し、鑑識のような警察官が自宅内に入る様子が近所の人々に目撃されており、通報を受けて警察が「家庭内トラブル」として対応していたとのことです。
一方、逮捕された男子生徒はサッカー部に所属しており、最後の大会を終えて引退したばかりでした。毎日新聞によると、同級生は「学校で問題を起こしたことはなく、家庭の話やトラブルも聞いたことがない」と話しているといいます。自宅の庭先には、使い込まれたサッカーボールが放置されていました。
事件現場となった自宅庭先に放置された、使い込まれたサッカーボール
受験を控えた夏休みに、中学3年生の息子と父親の間で一体何が起きていたのか。今回の悲劇に至る動機の解明が、今後の捜査で待たれます。家庭内で繰り返し起きていたとされる問題が、なぜ表面化することなく、今回のような悲劇へとつながってしまったのか、その背景に注目が集まっています。
参考文献:
- 集英社オンライン編集部ニュース班
- 毎日新聞