北海道でヒグマの出没が相次ぎ、深刻な問題となっています。jp24h.comでは、ヒグマ問題の最前線で活動するベテラン猟師、原田勝男さん(84)に密着取材を行い、その現状と課題、そして共存への可能性を探ります。
過去最多のヒグマ目撃件数、背景にあるものは?
2023年の北海道におけるヒグマの目撃情報は、過去最多の4055件を記録しました。民家近くに出没するクマが増えている背景には、人間の生活圏への拡大やゴミの不適切な処理など、人間の行動が大きく影響しているという指摘もあります。動物研究家のパンク町田氏は、民家近くに現れるクマは遺伝によるものという説もある一方、「クマは本来悪いことをしていない。ゴミあさりなどを覚えて習慣化するのは人間の責任でもある」と警鐘を鳴らしています。
北海道のヒグマ通報件数
指定管理鳥獣への追加、賛否両論の渦中
2024年4月、環境省はヒグマを「指定管理鳥獣」に追加しました。これにより、自治体はクマ対策を行う際に国から一定の交付金を受けられるようになります。しかし、この決定には「クマがかわいそう」といった反対の声も上がっており、秋田県には苦情電話が殺到したといいます。一方で、秋田県でクマに襲われ失明の恐れもあった湊屋啓二氏は、「亡くなる人もいる。ペット感覚で言うのはお門違い」と批判しています。北海道・奈井江町猟友会の山岸辰人部会長も「自ら進んで寿命を縮めるようなことはしたくない」と、クマとの遭遇が命の危険につながる現実を訴えています。
猟師歴50年以上、片目を失ったベテラン猟師の想い
原田さんは、重機会社を経営するかたわら、30歳で父と兄の影響を受けて狩猟を始めました。現在も野生動物から農作物を守る活動に尽力していますが、24年前のエゾシカ狩りの際、ヒグマに襲われ左目を失いました。「よくこれで助かった。本当に奇跡だ」と当時を振り返ります。しかし、退院後の報道で、地元のハンターがクマを半矢にして放置していたことを知り、衝撃を受けました。「撃っても責任を持たないと犠牲者が出る」と、ハンターとしての責任を強く感じています。
クマを捕らえる原田さん
クマとの共存を目指す、独自の駆除哲学
原田さんは「クマが食べたいのはわかるが、農家はそれで生活している」と、被害の深刻さを訴えています。クマ駆除のために箱わなを仕掛けていますが、捕獲したクマ全てを駆除するわけではありません。「襲ってくるのはほんの一部。人間に危害を加えないものは駆除する必要がない」と、独自の哲学に基づいて活動しています。2023年には27頭のヒグマを捕獲しましたが、その判断は常に慎重に行われています。
原田勝男さん
ヒグマ問題、私たちにできることは?
ヒグマとの共存は容易ではありません。しかし、原田さんのように最前線で活動する人々の努力を知ることで、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があるのではないでしょうか。ゴミの適切な処理、クマが生息する地域への不用意な侵入を避けるなど、一人ひとりの意識改革が、ヒグマとの共存への第一歩となるはずです。