国民健康保険料滞納で財産差し押さえ…その驚きの実態とは?

国民健康保険料(国保料)の滞納が続くと、役所が財産を差し押さえるケースがあることはご存知でしょうか。しかし、近年その差し押さえ行為が行き過ぎているとの声が上がっています。本記事では、ジャーナリスト笹井恵里子氏の著書『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中公新書ラクレ)を参考に、その実態に迫ります。

強引な差し押さえの実態

給与や年金はもちろん、不動産や自動車まで差し押さえられる事例が増加しています。大阪社会保障推進協議会が厚生労働省のデータに基づき分析した結果、差し押さえ率の高い自治体が判明。2016年度のデータでは、佐賀県、群馬県、長崎県がワースト3となっています。

特に群馬県では、滞納額約38億8700万円に対し、差し押さえ額は60億1700万円にも上ります。滞納額を上回る差し押さえ額の理由は、不動産の差し押さえです。

差し押さえのイメージ画像差し押さえのイメージ画像

故・仲道宗弘氏は、群馬県前橋市で過酷な差し押さえから市民を守る活動をしていました。仲道氏によると、「5、6万円の滞納に対し、100万円の評価額の不動産を差し押さえるケースもある」とのこと。国税徴収法では滞納額を大きく上回る財産の差し押さえは禁じられていますが、実際には様々な理由をつけて不動産差し押さえが行われていると指摘しています。

タイヤロックや銀行口座差し押さえも

仕事で使う車をタイヤロックする「自動車の差し押さえ」も横行しています。タイヤロックされると車が使えなくなり、生活に大きな支障が出ます。

また、20万円の国保料を滞納した場合、1万円ずつ20回の分割払いが認められず、5万円ずつ4回、あるいは10万円ずつ2回といった高額な分割払いを強制され、それができないと一方的に差し押さえられるケースも。

国保料の支払いが終わり、延滞金9万円のみが残っている状態で、2ヶ月連続で支払わなかったためにタイヤロックされた事例も報告されています。

2018年までは、銀行口座に給与が振り込まれたその日に全額差し押さえられるケースもありましたが、これは前橋地裁で「脱法的な差押処分として違法」との判決が出ています(東京高裁18年12月19日)。

生活保護相当の生活費は守られるべき

国保料滞納による差し押さえは、「生活保護相当の生活費」を残しておかなければなりません。しかし、違法な差し押さえ行為が近年も頻発しているという現状は深刻です。

「食と健康を考える会」代表の山田花子さん(仮名)は、「生活に不可欠な財産まで差し押さえられるのは、人権侵害にあたる可能性もある」と警鐘を鳴らしています。行政は、滞納者に対して適切な支援を行いながら、生活基盤を奪わないような徴収方法を検討する必要があるでしょう。

まとめ

国保料滞納による財産差し押さえの実態について、過酷な事例をご紹介しました。滞納は避けなければなりませんが、行き過ぎた差し押さえ行為は問題です。もし、同様の状況に直面している場合は、専門家や支援団体に相談することをお勧めします。

この記事が、国保料滞納と差し押さえ問題について考えるきっかけになれば幸いです。