ロシア極東シベリアの永久凍土から、絶滅した大型ネコ科動物スミロドンの子どものミイラが発見され、古生物学界に激震が走っています。 3万5千年前の氷河期にタイムスリップしたかのような、驚異的な保存状態のミイラは、スミロドンの生態解明に貴重な手がかりを提供してくれると期待されています。
毛並みも鮮やか!奇跡のミイラ、その全貌
alt: シベリアの永久凍土から発掘されたスミロドンの子どものミイラの全体像。毛皮や肉の一部が驚くほど良好な状態で保存されている。
今回発見されたミイラは、ロシア科学アカデミー古生物学研究所のアレクセイ・ロパーチン所長によれば、毛皮や肉の一部がまだ残っているほど保存状態が良好で、顔、前肢、胴体もほぼ無傷とのこと。短く密生した茶色の毛皮は、まるで生きているかのような柔らかさを保っているそうです。古代生物の息吹を感じられる、まさに奇跡の発見と言えるでしょう。
スミロドン研究に新たな光!ミイラが解き明かす進化の謎
スミロドンは、最大20cmにも及ぶ鋭い犬歯が特徴的な、現代のネコ科動物の祖先。今回の発見は、ホモテリウム・ラティデンスと呼ばれるスミロドン種がアジアに生息していた初めての確かな証拠となりました。マンモスなどの氷河期の動物のミイラはシベリアで発見されていますが、ネコ科動物のミイラは非常に珍しく、これまでに発見されたのは、同じくシベリアで発見された2体のホラアナライオンの赤ちゃんのミイラのみでした。
今回のスミロドンのミイラは、2020年にマンモスの牙を探していた発掘業者が、シベリア北東部を流れるバジャリカ川付近の永久凍土から偶然発見しました。放射性炭素年代測定法により、少なくとも3万5千年前の後期更新世に生きていたことが判明しています。
alt: 生後約3週間のスミロドンの子どものミイラと、現代のライオンの子どもの比較。体格や毛皮の色、耳の大きさなど、多くの違いが見て取れる。
ライオンの子どもとは全く違う!?ミイラの分析から見えてきたスミロドンの生態
ミイラは生後約3週間の子どもで、保存状態の良い前肢には爪や肉球まで残っています。現代のライオンの子どもと比較すると、毛皮の色が濃く、耳が小さく、前肢が長いなど、多くの違いが明らかになりました。特に興味深いのは、上唇の高さがライオンの子どもの2倍以上もある点。これは、成長した際に巨大な犬歯を唇で覆うための適応だった可能性があるとロパーチン氏は指摘しています。
また、絶滅哺乳類の解剖学を研究するジャック・ツェン氏(今回の発見には不参加)は、スミロドンの前肢がクマのように丸みを帯びていることに注目。クマのように前腕を使って獲物を捕らえていた可能性を示唆しています。
DNA分析で進化の謎に迫る!今後の研究に期待
今後、DNA分析や骨格、筋肉、毛皮の詳しい検査が行われる予定で、スミロドンの進化や生態の解明に大きく貢献することが期待されています。 この貴重な発見は、太古の時代に思いを馳せ、生命の進化の神秘に迫る絶好の機会となるでしょう。 今後の研究成果に注目です。