国民皆保険制度を誇る日本では、国民健康保険料の高騰が社会問題となっています。保険診療の範囲縮小を求める声も聞かれますが、本当にそれが解決策なのでしょうか? この記事では、保険診療の重要性と医療費抑制の真実に迫ります。
保険診療は医療費増加の要因? それとも抑制のカギ?
保険診療が医療費増加の要因だとする意見があります。「軽い風邪や湿布薬程度なら保険適用外にすればいい」という声も耳にするでしょう。しかし、医療ジャーナリストの笹井恵里子氏の新著『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』の中で、医療経済の専門家である長友氏は、この意見に真っ向から反論しています。
長友氏曰く、保険診療こそが医療費を抑制する重要な役割を果たしているとのこと。アメリカのように自由診療中心の医療制度では、医療費が高騰しているのが現状です。公的な医療保険と診療報酬制度があるからこそ、医療費がコントロールされ、軽症段階での受診も容易になり、重症化を防ぐことができるのです。
医療費
出産費用高騰の現実と保険適用外の問題点
自由診療が増加すると医療費が膨らむという点については、出産費用がその典型的な例と言えるでしょう。日本では出産は病気ではないという考えから、妊娠・出産費用は保険適用外となっています。その代わりに、出産育児一時金が支給されますが、一時金が増額されると医療機関の価格改定が行われ、出産費用も上昇するという悪循環に陥っています。
30年前に30万円だった出産育児一時金は、現在では大幅に増額されています。しかし、出産を取り巻く環境は劇的に変化したわけではありません。にもかかわらず、出産費用だけが異常に高騰している現状には、疑問を抱かざるを得ません。
保険診療の維持こそ、医療費抑制の近道
もし日本で自由診療が増え続け、低所得者が医療を受けられない事態になれば、国は公費を投入せざるを得なくなります。その結果、医療費はさらに高騰する可能性があります。保険診療の存在こそが医療費をコントロールし、私たちが支払う保険料の増加を抑える鍵となっているのです。
出産費用イメージ
国民健康保険料の未来
国民健康保険料の高騰は、私たち一人ひとりにとって大きな問題です。保険診療の重要性を改めて認識し、より良い医療制度の構築に向けて、共に考えていく必要があるのではないでしょうか。