従業員の社会保険料負担軽減を目的とした「106万円の壁」見直し案に、日本商工会議所が反対の意向を表明しました。本稿では、この見直し案の内容と、中小企業への影響、そして日本商工会議所の提言について詳しく解説します。
106万円の壁見直し案とは?そのメリット・デメリット
厚生労働省が検討している「106万円の壁」見直し案は、年収106万円を超えると社会保険料の負担が発生することを逆手に取り、労働時間を調整して年収を抑える層を対象に、事業主との合意があれば保険料の負担割合を減らすことができるというものです。
メリットとしては、労働者の手取り額が増える可能性がある点が挙げられます。しかし、デメリットとして、中小企業にとっては社会保険料の負担が増加する可能性があり、賃上げの原資を圧迫する懸念があります。
alt
中小企業への影響:賃上げ阻害の可能性も
日本商工会議所は、この見直し案に強く反対しています。多くの日本の中小企業は賃上げの原資確保に苦慮している現状で、社会保険料の負担増は到底耐えられないと訴えています。特に、薄利多売のビジネスモデルや、コロナ禍からの回復途上にある企業にとっては、さらなる負担増は経営を圧迫する大きな要因となるでしょう。
人事コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は、「この見直し案は、大企業にとっては負担軽減につながる可能性がある一方で、中小企業にとっては大きな痛手となる可能性が高い。政府は、中小企業の現状をしっかりと把握し、より現実的な支援策を検討する必要がある」と指摘しています。
日本商工会議所の提言:「第3号被保険者」制度の廃止も視野に
日本商工会議所は、今回の見直し案への反対に加え、「第3号被保険者」制度の廃止に向けた検討も求めています。「第3号被保険者」制度とは、会社員や公務員を配偶者に持つ専業主婦などが保険料の負担なしで基礎年金を受け取れる制度です。
深刻化する人手不足の現状において、この制度が主婦層の働き控えにつながっているという指摘があります。日本商工会議所は、将来的な人材不足の解消に向けて、この制度の在り方を見直すべきだと主張しています。
まとめ:更なる議論が必要な「106万円の壁」問題
「106万円の壁」見直しは、労働者、企業、そして日本経済全体にとって重要な課題です。今回の日本商工会議所の提言を踏まえ、政府は多様な立場からの意見を丁寧に集約し、より実効性のある対策を講じる必要があります。