緒形直人さんといえば、穏やかな語り口と幅広い役柄で知られるベテラン俳優。デビューから37年、数々の映画やドラマで活躍し、「世界遺産」のナレーションも好評です。最新作「シンペイ~歌こそすべて」では島村抱月を演じ、新たな一面を見せてくれます。今回は、緒形さんの役作りへのこだわり、特に難役への挑戦について深く掘り下げていきます。
俳優・緒形直人の役作りへの情熱
緒形さんは、一つ一つの役に真摯に向き合い、役になりきることに強いこだわりを持っています。そのため、複数の作品が重なることを避け、各作品に集中することを大切にしています。大河ドラマ「信長 KING OF ZIPANGU」で主演を務めた後も、「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」や「サクラサク」など、主演作を含め多くの作品で活躍。映画「サクラサク」では、認知症の父親を持つ息子役を演じ、家族の再生というテーマに自身を重ね合わせながら役を深めていきました。
緒形直人さん
過密スケジュールと葛藤
過去には、ドラマの撮影が重なり、精神的に追い詰められた経験も。社長に辞意を伝えるほど追い詰められましたが、緒形さんの役作りへの真剣さを理解した社長の配慮により、その後は過密スケジュールを避けるようになりました。この経験からも、緒形さんの役への没頭ぶりが伺えます。
難役「64―ロクヨンー」の犯人役:その後の苦悩
映画「64―ロクヨンー」では、少女誘拐殺人事件の犯人という難役に挑戦。緒形さん自身、これまで演じたことのないような悪役に挑むことに意欲を燃やしていました。共演の佐藤浩市さんや監督からの期待もあり、犯人役を引き受けた緒形さん。しかし、役作りは想像以上に困難を極めました。
犯人の心理に迫る苦悩
犯人役を演じるにあたり、緒形さんは原作を読み込み、犯人の心理を理解しようと努めました。しかし、子どもの命を奪うという常軌を逸した行動を理解することは容易ではなく、役に入り込みすぎた結果、撮影後も役が抜けなくなるという精神的な苦悩を味わいました。
緒形直人さん 東京拘置所の1日所長に
この経験を通して、緒形さんは人間の深淵に触れ、役者としての新たな境地を開拓しました。演技への真摯な姿勢とたゆまぬ努力が、緒形直人という俳優の奥深さを作り上げていると言えるでしょう。今後の活躍にも期待が高まります。