ウクライナ軍および複数の軍事専門家は、ロシア軍がウクライナ東部の前線の一部において、限定的ではあるものの戦略的に重要な地域で急速な前進を遂げたと指摘しています。この動きは、過去数ヶ月間にわたりウクライナ軍が高い代償を払いながらも阻止してきたロシア軍の緩やかな進展とは一線を画し、ウクライナ側の警戒を強めています。
ロシア軍、ウクライナ東部戦線で急速な前進
ロシアは2022年のウクライナ侵攻開始以来、前線全体で高い損害を被りつつも、地道な進展を続けてきました。ロシア側はウクライナの4地域を併合したと主張していますが、それらの地域における支配権を巡る戦闘は依然として続いています。今回の急速な進展は、特にドネツク州での新たな局面を示しています。
ドネツク州での具体的進攻と脅威
ウクライナ軍は12日、声明でドネツク州クチェリフ・ヤール村周辺で戦闘が発生し、ロシア軍の前進があったことを公式に認めました。軍と密接な関係を持つウクライナのブログ「ディープ・ステート」の報告によると、ロシア軍は約2日間で10キロメートルほど進軍したとされます。
ドブロピリャとコンスタンチノフカへの影響
「ディープ・ステート」は、ロシア軍が確保したこの狭い地域が、鉱業の町であるドブロピリャを脅かしていると指摘しています。ドブロピリャでは既に民間人の避難が進められており、ロシア軍による無人機攻撃も受けています。また、今回の進軍は、ドネツク州でウクライナが依然として死守している主要都市の一つであり、既に甚大な被害を受けているコンスタンチノフカにも脅威を与えています。
ウクライナ ドネツク州 コンスタンチノフカ ロシア軍攻撃現場
軍事ブロガーとシンクタンクの分析
人気軍事ブロガーのステルネンコ氏は、ロシア軍が今回の進軍の過程で、ドネツク州の重要な人口密集地を結ぶ高速道路の一部を掌握したとテレグラムに投稿し、これに先立ち「状況は危機的だ」と述べていました。
一方、米国を拠点とするシンクタンク「戦争研究所(ISW)」は、「ロシアの破壊工作・偵察部隊がドブロピリャ近郊に侵入しているとの報告がある」としながらも、「この地域におけるロシアの進展を、作戦レベルの突破と呼ぶのは時期尚早である」と冷静な評価を示しました。しかし、ISWは、ロシア軍の攻撃を阻止するためには今後数日が極めて重要になると警告しており、緊迫した状況が続くことが予想されます。
結論
ロシア軍のドネツク州における急速な進展は、ウクライナ東部戦線における戦況の新たな局面を示しており、ドブロピリャやコンスタンチノフカといった戦略上重要な都市への直接的な脅威となっています。ウクライナ軍と軍事専門家は、この状況の重要性を強調しており、今後の数日間が戦況の行方を左右する可能性があります。