トランプ氏支持率、なぜ世論調査は読み間違える? 識者の分析と今後の課題

世論調査は、大統領選の行方を占う上で重要なツールとされています。しかし、2024年の米大統領選でも、トランプ前大統領の支持率が世論調査で過小評価される現象が再び起こりました。なぜこのような「読み間違い」が繰り返されるのでしょうか? 識者の分析や世論調査機関の取り組み、そして今後の課題を探ります。

世論調査と現実の乖離:トランプ氏の支持率過小評価の謎

今回の大統領選で、主要メディアや世論調査機関が発表した世論調査の平均値は、トランプ氏の支持率をハリス副大統領より1ポイント低いと予測していました。しかし、開票結果はトランプ氏50%、ハリス氏48%と、世論調査の予測を覆す形となりました。

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実は、トランプ氏の支持率が世論調査で過小評価される現象は、2016年、2020年の大統領選でも見られました。538のデータによると、2016年は2ポイント、2020年は4ポイントの乖離があったといいます。統計学的に見ると許容範囲内の誤差とも言えますが、専門家の間では、トランプ支持者へのアクセスが難しいことが原因ではないかとの見方が強まっています。

マーケット大学法科大学院のチャールズ・フランクリン氏は、「トランプ支持者とつながるという面で課題がある」と指摘。米公共意見調査協会の作業部会に参加し、選挙前調査の問題点を分析しています。

激戦州でも過小評価:世論調査への信頼低下を懸念

アリゾナ、ジョージア、ネバダ、ノースカロライナといった激戦州でも、トランプ氏の実際の得票率は世論調査よりも1~3ポイント高くなりました。ラストベルト(さび付いた工業地帯)と呼ばれるペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガンでも同様の傾向が見られました。

バンダービルト大学の政治学者ジョシュ・クリントン氏は、この「測定ミス」が世論調査や政治制度全般への信頼を損なう可能性を懸念しています。「運営方法全体が認められないというのは大きなダメージ」とクリントン氏は警鐘を鳴らします。

回答率の低下とトランプ氏批判:世論調査の難しさ

専門家の中には、迷惑メールの増加などにより、電話調査への回答率が低下していることも要因の一つとして挙げる人もいます。また、トランプ氏自身も、世論調査は自分に不利な偏見を持っていると批判しています。

トランプ陣営の広報担当者は、「世論調査機関やワシントンの評論家、メディアはトランプ氏と支持者の歴史的な連携を常に過小評価してきた。唯一意義のある世論調査は投票日に行われたものだ」とコメントしています。

世論調査機関の挑戦:精度向上に向けた取り組み

一部の専門家は、数ポイント以内の誤差であれば優れた成果だとし、さらなる改善は難しいと主張しています。しかし、世論調査機関は精度向上に向けた様々な取り組みを行っています。

例えば、フランクリン氏は、従来の調査方法を改良し、電子メールで事前に連絡を取ってから電話調査を行うなどの工夫をしています。これにより、2020年と比べてトランプ氏の得票率と支持率の差を縮めることができたといいます。

今後の課題:変化する社会への対応と信頼回復

世論調査は、有権者の動向を把握し、民主主義を支える重要な役割を担っています。しかし、社会の変化や有権者の意識の変化に対応していくためには、更なる進化が求められています。

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トランプ支持層へのアクセス改善、回答率の向上、調査方法の精緻化など、様々な課題に取り組むことで、世論調査の精度を高め、社会からの信頼を回復していくことが重要です。