かつて一世を風靡したものの、今は亡き自動車メーカー。その栄光と衰退、そして語り継がれるべき名車たちの物語を紐解いていきます。時代の波に乗り遅れ、巨大企業でさえもあっという間に消えてしまう自動車業界の厳しい現実。忘れ去られたメーカーもあれば、革新的な技術やデザインで今もなお影響を与え続けているメーカーもあります。今回は、そんな消えゆく運命を辿った自動車メーカーと、彼らの代表的なモデルに焦点を当て、その「最期」を振り返ります。
AMC：クロスオーバーSUVの先駆け、イーグルの誕生と終焉
AMCイーグルは、1980年代に登場した本格的な四輪駆動システムと高い最低地上高を備えたファミリーカー。悪路や雪道での走破性を誇り、現代のクロスオーバーSUVの先駆けとも言える存在でした。現在人気を博しているクーペSUVのデザインも、実はイーグルSX/4が先取りしていたのです。
AMCイーグル
AMCの衰退：ルノーによる買収、そしてクライスラーへの売却
AMCは1979年にフランスのルノーに買収されました。しかし、1980年代の比較的安価な燃料価格の影響で、小型車中心のAMCは苦戦を強いられます。AMCを支援していたルノーCEOのジョルジュ・ベッセ氏が1986年に暗殺されると、後任の経営陣はAMCへの関心を失い、1987年にクライスラーに売却。こうしてAMCの歴史は幕を閉じました。
AMCイーグルSX/4
アンフィカー：水陸両用車、モデル770の革新と限界
1961年に登場したアンフィカー・モデル770は、車とボートのハイブリッドという、他にライバルのいないユニークな存在でした。トライアンフ製の4気筒エンジンをリアに搭載し、後輪またはスクリュープロペラで水上と陸上を走行。前輪操舵で、水上でも陸上と同じように運転できました。驚くべき多用途性と完全防水性を誇り、当時のリンドン・ジョンソン大統領も愛用していたという逸話が残っています。
アンフィカー・モデル770
アンフィカーの終焉：ニッチ市場の壁、そして自動車業界からの撤退
しかし、水陸両用車というニッチな市場は、アンフィカーを財政的に支えるには小さすぎました。BMWの大株主であるクヴァント家所有の会社によって西ドイツで約4000台が生産された後、1967年に生産終了。アンフィカーはモデル770の生産終了とともに自動車業界から撤退しました。大量生産された水陸両用車は、現在に至るまでアンフィカー・モデル770が唯一の存在となっています。
リンドン・ジョンソン大統領とアンフィカー・モデル770
時代の流れとともに、自動車メーカーの盛衰は繰り返されます。革新的な技術や斬新なデザインで市場を席巻したメーカーも、時代の変化に対応できずに消えていく運命を辿ることも少なくありません。これらの物語は、自動車業界の競争の激しさと、常に進化し続けることの重要性を教えてくれます。
