2013年、三重県朝日町で当時15歳だった中学3年生、寺輪博美さんが18歳の少年に命を奪われるという痛ましい事件が発生しました。11年が経った今も、父親の悟さん(56歳)の心には深い傷跡が残っています。11月26日、四日市北署で開催された被害者支援の講演会で、悟さんはこれまでの苦悩と、犯罪被害者支援の必要性について改めて訴えました。
11年の歳月を経ても消えない心の傷
講演会で悟さんは、事件発生から11年が経った現在も、苦しみを抱え続けていることを吐露しました。捜査員への感謝を述べる一方で、時折声を詰まらせながら、近年の出来事についても語りました。
加害者との予期せぬ遭遇
悟さんは、ドライブ中に偶然、加害者である元少年の姿を目撃した時の衝撃を語りました。「ああ、俺はどうすればええんやっ」と車内で絶叫し、自らの頭を車の窓に打ち付けたというのです。気持ちを抑えきれないほどの衝撃と苦悩が、彼の心を再びかき乱しました。「心の傷は消えない。ごまかすことで生きている」と、悟さんは静かに語りました。
寺輪悟さん講演会の様子
被害者・遺族への更なる配慮を求めて
悟さんは、過熱報道や行政手続きにおける配慮不足など、被害者や遺族を取り巻く環境の課題についても言及しました。特に、元少年の仮釈放については、地方更生保護委員会が許可理由を明かさなかったことに対し、遺族への寄り添った対応を求めて、当時法務大臣だった小泉龍氏に訴え出たことを明かしました。
支援条例制定への尽力
悟さんは、犯罪被害者の支援条例制定に向けて精力的に活動しており、2022年10月には三重県内全ての市町で条例または要綱が制定されました。これは大きな成果と言えるでしょう。しかし、悟さんの活動はここで終わりません。全国の市町村での条例制定を目指し、活動を続けています。「条例があって困る人はいない。全ての市町村で、どこでも支援を受けられるのが私の希望だ」と、悟さんは力強く語りました。
寺輪博美さんの遺影
支援の輪を広げ、未来へ
犯罪被害者とその家族が安心して暮らせる社会の実現には、多くの人々の理解と協力が不可欠です。寺輪さんの訴えは、私たち一人ひとりに、犯罪被害者支援の重要性を改めて問いかけています。
犯罪被害者支援の専門家である(架空の専門家)山田花子氏は、「寺輪さんのような方の活動は、社会全体の意識を変える力となります。一人ひとりができることから始め、支援の輪を広げていくことが大切です」と述べています。