高齢者の就労意欲を高め、人材不足解消の一環として、厚生労働省は「在職老齢年金制度」の適用基準額引き上げを検討しています。現在、65歳以上の高齢者が厚生年金を受給しながら働く場合、年金と賃金の合計が月50万円を超えると年金が減額される仕組みです。これを62万円に引き上げるという今回の改正案。一見、高齢者にとって朗報のようですが、現役世代への影響は無視できない深刻な問題をはらんでいます。
高齢者雇用促進の美名のもと、高所得者優遇の実態
厚労省は、基準額引き上げにより、経験豊富な高齢者がより長く働き続けられるようになり、深刻化する人材不足の解消に繋がるとしています。しかし、月62万円という高額を稼ぐ高齢者が一体どれほどいるのでしょうか。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、年収700万円(月収換算約58万円)を超える人は全体の15%程度。744万円(月収換算62万円)を超える人はさらに少ないはずです。
在職老齢年金制度の説明図
経済ジャーナリストの山田一郎氏(仮名)は、「今回の改正は、高所得の高齢者を優遇する政策と言わざるを得ません。本当に人材不足を解消したいのであれば、低所得の高齢者層の雇用支援策に力を入れるべきです」と指摘します。
誰のための改正?国民の声は届いているのか
ネット上では、今回の改正案に対する批判の声が多く上がっています。「天下り官僚へのご褒美ではないか」「富裕層優遇だ」「生活に苦しむ現役世代への負担が増えるだけ」といった辛辣な意見が目立ちます。
給与所得者の平均年収は約460万円。手取り額はさらに少なく、生活は決して楽ではありません。物価高騰や増税で家計が圧迫される中、現役世代は将来への不安を抱えています。
年間1600億円の財源は?現役世代への更なる負担増か
基準額引き上げによる年金支給額の増加は、年間1600億円と試算されています。この莫大な財源はどこから捻出するのでしょうか。社会保険料の値上げとなれば、既に苦しい生活を送る現役世代への更なる負担増となります。
山田氏は、「国民の多くが恩恵を受ける『103万円の壁』撤廃については、財源問題で議論が難航しています。一方で、高所得者層向けの年金増額には1600億円もの予算が計上される。この矛盾に国民は納得できるでしょうか」と疑問を呈します。
未来への不安
政府は、国民の声に真摯に耳を傾け、本当に必要な政策は何なのかを改めて考える必要があります。高齢者支援は重要ですが、現役世代の生活基盤を脅かすような政策は、将来への不安を増大させるだけです。
本記事で取り上げた問題について、皆さんのご意見をお聞かせください。コメント欄で活発な議論を期待しています。また、jp24h.comでは、様々な社会問題に関する記事を掲載しています。ぜひ他の記事もご覧ください。