斎藤元彦氏、兵庫県知事選勝利の舞台裏:ネット戦略と立花孝志氏の存在

兵庫県知事選、斎藤元彦氏の劇的な勝利から10日あまり。選挙結果確定後も様々な議論が続く中、逆風を跳ね除け、有権者の支持を一気に獲得した斎藤氏の戦略は特筆に値します。今回は、選挙戦でも世論調査を実施したJX通信の米重克洋代表に、その舞台裏を詳しく伺いました。

ネットの力:情報発信の主戦場はテレビからネットへ

当初、斎藤氏への厳しい見方が大勢を占めていました。しかし、選挙期間に入ると状況は一変。ネットの力が大きく作用したと言われています。米重氏は、この点についてどのように分析しているのでしょうか?

米重氏によると、選挙期間中は公選法や放送法の制約により、新聞やテレビの情報発信は抑制的にならざるを得ません。一方で、ネット上ではインフルエンサーによる情報発信が活発化します。2020年のNHK放送文化研究所の調査では、30代以下の世代では既にテレビよりもネットの接触率が高かったという結果が出ていますが、現在ではさらに上の世代にもこの傾向が広がっていると考えられます。人々が頻繁に接するネット上で、斎藤氏を擁護する情報が大量に発信されたことが、世論の形成に大きな影響を与えたと米重氏は見ています。

新聞社やテレビ局もネットニュースを配信していますが、有権者はSNSの情報に注目しているようです。

兵庫県知事選の報道陣兵庫県知事選の報道陣

立花孝志氏の存在:斎藤氏勝利の影の立役者

米重氏は、特に今回の選挙で同じく立候補していた立花孝志氏による情報発信が、斎藤氏の当選に大きく影響したと指摘します。立花氏は「斎藤氏の応援をする、自身の当選は目指さない」と公言し、異例の選挙戦を展開。YouTubeを効果的に活用しました。

過去の都知事選でも、YouTubeでの検索ボリュームを急激に増やした候補者が終盤に支持を伸ばし、得票に繋げた例があります。兵庫県知事選でも、斎藤氏のYouTube検索ボリュームは終盤に急増しましたが、それをはるかに上回ったのが立花氏でした。

立花氏は、斎藤氏自身が言えないような情報や、「不信任に至るまでの真相」といった真偽不明の情報も含め、選挙期間中も積極的に発信しました。街頭演説でも斎藤氏の後を追うように同じ場所で演説を行うなど、その言動は他のネットユーザーによって拡散され、大きな話題となりました。

立花孝志氏の街頭演説立花孝志氏の街頭演説

立花氏は、一種の「ネタ製造装置」として機能したと言えるでしょう。インフルエンサーである立花氏自身による発信だけでなく、その言動を拡散する人々も存在することで、主張は一気に広まりました。

有権者の選挙への関心が最も高まる時期に、立花氏の発信が「斎藤氏とはこういう人物だったのか」「斎藤県政とはこういうものだったのか」と有権者に再評価させるきっかけになったと米重氏は分析します。斎藤氏本人による発信よりも、立花氏らによる支援活動が、斎藤氏の支持拡大に繋がったと言えるでしょう。

まとめ:新たな時代の選挙戦略

今回の兵庫県知事選は、ネット戦略の重要性を改めて示す結果となりました。従来のメディアに加え、SNSやYouTubeといったプラットフォームを効果的に活用することで、有権者への情報伝達を最大化し、支持拡大に繋げることが可能となります。今後の選挙においても、ネット戦略はますます重要性を増していくと考えられます。