中国人民解放軍内部で蔓延する汚職問題。その捜査網が現職の国防相、董軍氏に及んでいる可能性が浮上しました。英国のフィナンシャル・タイムズ紙が11月27日に報じたこのニュースは、中国軍の腐敗問題が根深いことを改めて示唆するものとなっています。
3代連続で国防相に汚職疑惑?異例の事態に
董軍氏は2023年12月に国防相に就任したばかり。もし疑惑が事実であれば、3代連続で国防相が汚職疑惑に晒されるという、前代未聞の事態となります。習近平国家主席が推し進める「軍の近代化」に暗雲が立ち込めています。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、董氏への捜査は現在進行中の軍内部の汚職摘発の一環とのことですが、具体的な容疑内容は明らかになっていません。中国軍では昨年来、大規模な粛清が行われており、既に複数の将軍や防衛産業幹部が摘発されています。
中国国防相 董軍氏
前任者2人も汚職疑惑で解任の過去
董氏の直前の国防相、李尚福氏はわずか7ヶ月の在任期間で解任されました。李氏の解任劇が起きた2023年10月には、欧米や香港メディアが軍の汚職疑惑を報じており、李氏自身も2ヶ月間公の場に姿を現さない時期がありました。
さらに、李氏の前の国防相であった魏鳳和氏も、汚職疑惑の中で解任されています。李氏と魏氏は共に、2024年6月に「重大な規律違反」があったとして共産党の党籍を剥奪されました。「重大な規律違反」は、中国共産党用語で汚職を意味する婉曲表現として知られています。
軍の信頼失墜、台湾侵攻計画への影響は?
一連の汚職摘発は、習近平国家主席の軍への信頼を揺るがす事態となっています。フィナンシャル・タイムズ紙は、米軍当局者が習主席が掲げる「2027年までの台湾侵攻準備完了」という目標の実現可能性に疑問を抱いていると報じています。
董氏はつい先日、ラオスで開催されたASEAN拡大国防相会議に出席し、日本の中谷元防衛相らと会談を行ったばかりでした。一方で、台湾問題を巡るアメリカの行動を理由に、アメリカのオースティン国防長官との会談は拒否しています。
専門家の見解
軍事アナリストの佐藤健氏(仮名)は、「中国軍における汚職問題は、単なる腐敗問題にとどまらず、軍の指揮系統や士気に深刻な影響を与える可能性がある。今回の董氏への捜査は、習近平政権にとって大きな痛手となるだろう」と指摘しています。
軍内部の腐敗問題、今後の展開は?
中国軍内部の腐敗問題は、今後の中国の安全保障政策、そして国際情勢にも大きな影響を与える可能性があります。董氏への捜査の進展、そして中国政府の対応に、世界中の注目が集まっています。今後の展開を注意深く見守る必要があります。