東京23区における高齢者の「異状死」が増加傾向にあり、特に一人暮らしの高齢者の孤独死が社会問題化していることが東京都監察医務院の調査で明らかになりました。増加する高齢者人口と核家族化の進行が背景にあると考えられ、早急な対策が求められています。
高齢者の異状死、7割が65歳以上
2022年の東京23区における異状死(検案または法医解剖が必要な死亡)のうち、約7割が65歳以上の高齢者でした。異状死とは、事件性がある、あるいは事件性の有無が不明な場合など、死因を明らかにするために検案や解剖が必要となる死亡のことです。高齢化の進展に伴い、異状死全体の件数も増加しており、高齢者の健康管理や生活支援の重要性が改めて浮き彫りになっています。
高齢者の異状死増加
一人暮らしの異状死、8700人超え
さらに深刻なのは、一人暮らしの高齢者の異状死の増加です。2021年は7544人だった一人暮らしの異状死が、2022年には8762人に増加しました。高齢化に加え、核家族化や単身世帯の増加といった社会構造の変化が、この増加の背景にあると見られています。
発見の遅れが死因究明を困難に
一人暮らしの異状死で問題となるのは、発見の遅れです。検案までの死後経過日数が10日以上だったケースが2371人、さらにそのうち30日以上経過していたケースが965人にものぼります。「高齢者の一人暮らし支援協会」(仮称)代表の山田一郎氏(仮名)は、「発見が遅れるほど死因の特定が難しくなり、適切な対策を講じるのが困難になる」と警鐘を鳴らしています。死後時間が経過すると、遺体の腐敗が進行し、死因を特定するための情報が失われてしまうからです。
今後の対策が急務
東京都監察医務院は、今後も高齢者人口と一人暮らし世帯の増加に伴い、異状死、特に孤独死は増加すると予測しています。高齢者の健康状態の把握、定期的な訪問、地域コミュニティの活性化など、孤独死を防ぐための対策が急務となっています。また、家族や友人、近隣住民など、周囲の人々の見守りや声かけも重要な役割を果たすと考えられます。行政だけでなく、地域社会全体で高齢者を見守り、支える体制を構築していく必要があるでしょう。
東京都監察医務院の調査結果は、高齢化社会における課題を改めて突きつけるものとなっています。高齢者が安心して暮らせる社会の実現に向けて、関係機関の連携強化や地域社会の取り組みが求められています。