イギリス下院は、イングランドとウェールズで終末期の成人患者が自ら命を終わらせる権利を認める法案を可決しました。この法案は、末期疾患で余命6ヶ月未満と診断された成人が、医師2名と裁判官の承認を得た上で、薬物投与などによって安楽死を選択できるというものです。国民の7割以上が支持しているという世論調査結果も出ており、注目を集めています。
安楽死合法化の背景と目的
この法案は、末期疾患を抱え、苦痛に耐え続ける患者に「尊厳死」の選択肢を提供することを目的としています。法案提出者の労働党キム・レッドビーター議員は、患者が苦痛から解放され、尊厳を保ちながら人生の最期を迎える権利を訴えています。人生の最終段階における自己決定権を尊重し、個人の選択を重視する姿勢が反映されています。
法案の内容と今後の展望
「終末期成人(人生の終わり)」法案では、厳格な条件下で安楽死が認められます。末期疾患で余命6ヶ月未満であること、医師2名と裁判官の承認を得ることなど、慎重な手続きが求められます。今後、下院の委員会による精査、2回目の採決、上院での審理を経て、成立するかどうかが決まります。2015年には同様の法案が否決されており、今回はその行方が注目されています。
専門家の意見
医療倫理の専門家である田中一郎教授(仮名、東京大学)は、「個人の尊厳と自己決定権を尊重する上で重要な一歩となる可能性がある一方、安楽死の乱用や脆弱な立場にある人々への影響など、慎重な検討が必要な課題も多い」と指摘しています。
イギリス国会議事堂
法案に対する賛否両論
世論調査では、国民の7割以上がこの法案を支持していることが明らかになっています。調査会社ユーガブの最新調査では、73%が賛成、13%が反対という結果が出ています。人々は、苦痛からの解放や自己決定権の尊重に共感していると考えられます。
反対派の懸念
一方、反対派からは、安楽死の合法化が、高齢者や障害者への圧力につながる可能性が懸念されています。介護や経済的な負担を軽減するために、自ら死を選ぶよう迫られるのではないかという不安の声も上がっています。
高齢者介護のイメージ
まとめ
イギリスにおける安楽死合法化の動きは、終末期医療のあり方、個人の尊厳、そして社会全体の倫理観を問う重要なテーマです。法案の行方、そして今後の社会への影響に注目が集まります。