コンビニ万引き対策、顔写真掲示の是非:効果とリスク、そして法的問題点

コンビニエンスストアでの万引き対策として、疑わしい人物の顔写真を店内に掲示する行為が物議を醸しています。抑止効果を狙ったこの手法は、果たして有効なのでしょうか?プライバシー侵害や名誉毀損といった法的リスク、そして適切な対策とは何か、多角的に考察します。

万引き被害の深刻化とコンビニの苦悩

近年の万引き被害は深刻化しており、警視庁のデータによると2024年10月末までの東京都内における万引き被害は9451件。中でもコンビニエンスストアは、デパートやスーパーに次いで被害が多く、全体の約4分の1を占めています。こうした現状を受け、コンビニ各店舗は様々な対策を講じていますが、その中には今回のように、万引き犯とされる人物の顔写真を店内に掲示するといった強硬な手段も含まれています。

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あるセブン-イレブンの店舗では、「当店は万引きに厳しいお店です。絶対に見つけます」「万引きは許しません」といった文言とともに、複数の男性の顔写真が商品棚に掲示されていました。この写真について、街の人からは「お店の苦肉の策だと思う」「万引き犯はさらされても当たり前」といった賛同の声も聞かれました。しかし、本当に効果的な対策と言えるのでしょうか?そして、法的に問題はないのでしょうか?

顔写真掲示の法的リスク:プライバシー侵害と名誉毀損

万引き犯とされる人物の顔写真を無断で公開することは、たとえ実際に万引き行為を行っていたとしても、プライバシー侵害や名誉毀損にあたる可能性があります。弁護士の松隈貴史氏(橋下綜合法律事務所)は、「仮に万引き犯であっても、本人の許可なく写真を公開すれば、プライバシーの侵害や名誉毀損という点が問題になる」と指摘しています。

さらに、今回問題となった店舗では、「写真の撤去に1万円かかる」という文言も添えられていました。この点についても松隈氏は、「実際に金銭を要求し、支払わせてしまった場合は、私的制裁にあたり、刑法上の恐喝罪に問われる可能性もある」と警鐘を鳴らしています。

セブン&アイ・ホールディングスの対応と再発防止策

親会社であるセブン&アイ・ホールディングスは、今回の件について「対象店舗を特定し、厳しく注意喚起を実施するとともに、写真はすでに撤去した」と説明。「プライバシーへの配慮を欠いた対応であり、容認できるものではない」との見解を示しました。また、加盟店向けに社内誌や定期的な案内を通じて、未然防止策の周知徹底を図っているとしています。

効果的な万引き対策とは?専門家の提言

万引き対策は、セキュリティ強化だけでなく、従業員教育や地域連携も重要です。防犯カメラの設置や死角をなくす工夫はもちろんのこと、従業員による声かけやお客様への積極的なコミュニケーションも有効な手段となります。また、地域住民や警察との連携を強化することで、地域全体で万引きを抑止する体制づくりが求められます。

小売セキュリティコンサルタントの佐藤一郎氏(仮名)は、「万引き対策は、単一の対策ではなく、多層的なアプローチが重要だ。ハード面の対策に加え、ソフト面の強化、そして地域との連携を図ることで、より効果的な対策が可能になる」と述べています。

まとめ:適切な対策で安全・安心な店舗運営を

万引きは許される行為ではありませんが、その対策においては、法令遵守と人権尊重の観点から慎重な対応が求められます。感情的な対応ではなく、適切な対策を講じることで、安全・安心な店舗運営を目指していく必要があります。