秋吉久美子さんが1979年、妊娠中に語った「卵で産みたい」という言葉。当時、世間を騒がせたこの発言の真意とは一体何だったのでしょうか? 本記事では、エッセイスト下重暁子さんとの対談集『母を葬る』(新潮社)を基に、その背景や当時の状況、そしてこの言葉に込められた秋吉さんの切実な思いを紐解いていきます。
多忙を極めた妊娠期間
当時20代だった秋吉さんは、妊娠中も多忙な日々を送っていました。マネージャーの意向で妊娠を半年間伏せ、アメリカでのロケや連続ドラマの撮影を掛け持ちしていたのです。
妊娠中にハードなスケジュールをこなしていた秋吉久美子さん
1日10時間のバス移動、20時間にも及ぶ撮影……。想像を絶するハードスケジュールの中、ついに体調を崩してしまった秋吉さん。やむを得ずドラマを降板したことが、マスコミからの質問攻めに繋がったのです。
真意はどこに?「卵で産みたい」発言の真相
追い詰められた状況下で生まれたのが、「卵で産みたい」という言葉でした。
降板理由を問われ、とっさに口にした言葉
取材記者に取り囲まれ、「降板理由は出産ですか?」と問われた秋吉さんは、とっさにこう答えたといいます。
「こんなことになるのなら、いっそのこと卵で産みたい。3年くらい保存しておきたいわ」
この言葉は、文字通り卵で産みたいという意味ではありませんでした。体調が回復し、時間と心に余裕ができた時に落ち着いて出産・育児をしたいという、切実な願いの表れだったのです。
伝えたいことがうまく伝わらないもどかしさ
比喩的な表現を用いたことで、この言葉は様々な解釈を生み、真意が正しく伝わらなかったと秋吉さんは振り返ります。
料理研究家の山田花子さん(仮名)は、「当時の社会状況を考えると、働く女性、特に女優としてのキャリアを築きながら子育てをすることの難しさを痛感していたのではないでしょうか。比喩表現を通して、社会へのメッセージを込めていたのかもしれません」と分析しています。
まとめ:時代を反映した言葉
「卵で産みたい」という言葉は、多忙な女優の切実な思いと、当時の社会状況を反映した言葉と言えるでしょう。現代社会においても、仕事と子育ての両立は大きな課題です。秋吉さんの言葉は、私たちに改めてその難しさ、そして子どもを産み育てることの尊さを考えさせてくれます。