アレッポ、かつてシリアの経済中心地として栄えたこの都市が、再び激しい戦闘の舞台となっています。2016年にアサド政権によって奪還されて以来、比較的安定していたアレッポでしたが、反体制派による大規模な攻勢により、再び戦火に見舞われています。今回の戦闘は、シリア内戦の新たな局面を予感させるものとなっています。
反体制派による電撃的なアレッポ市街地への進攻
2024年11月29日、反体制派がアレッポ市内の複数地区を掌握したという衝撃的なニュースが世界を駆け巡りました。イギリスに拠点を置くNGO「シリア人権監視団(SOHR)」によると、同日夕方の時点で、反体制派は市街地の半分以上を制圧したとされています。
アレッポで活動する反体制派
イスラム過激派組織「ハヤト・タハリール・アル=シャーム機構(HTS)」に関連するチャンネルには、アレッポ市内で車両に乗った戦闘員の姿を捉えた動画が投稿され、BBCヴェリファイ(検証チーム)によってアレッポ西郊で撮影されたものだと確認されました。反体制派の声明によれば、「部隊はアレッポ市内に進入し始めた」とのことです。
アレッポ市民の避難とシリア政府の対応
BBCが検証した映像には、中世に建設されたアレッポ城塞から約7キロ離れた通りを走る戦闘員や、アレッポ大学近くの地域から荷物を抱えて歩く市民の姿が映し出されています。これらの映像は、反体制派が市街地へ進攻したことを示唆するものです。
シリア政府は、援軍部隊をアレッポに派遣し、反体制派の掃討作戦を開始したと発表しています。また、ロイター通信によると、アレッポ発着の全フライトがキャンセルされ、空港は閉鎖されたとのことです。
激化する戦闘と高まる緊張
SOHRによると、シリアとロシアの軍機は29日、アレッポ地域で23回の空爆を実施。この戦闘で255人が死亡したと報告されています。シリア政府軍と反体制派の戦闘でこれほどの死者が出るのは、近年では稀な事態です。
2020年にロシアとトルコがイドリブ県での停戦に合意して以来、大規模な戦闘は沈静化していました。しかし、HTSとその同盟勢力は27日、「攻撃を抑止する」ために攻勢を開始したと発表し、政府と政府系民兵組織が地域の緊張を高めていると非難しています。
国際情勢とシリア内戦の行方
今回の反体制派の攻勢は、シリア政府とその協力国が他の紛争に注力している最中に発生しました。隣国レバノンでは、イスラエル軍がイランの支援を受けるイスラム組織ヒズボラに大規模な攻撃を加えています。ヒズボラはかつて、アサド政権を支援するためにシリア内戦に参戦し、政府軍の優勢回復に貢献しました。
また、イスラエルはシリア国内で、イランおよびイランが支援する組織関連の目標に対する空爆を強化しています。これらの国際情勢の変化が、シリア内戦の今後の行方にどのような影響を与えるのか、予断を許さない状況です。
混迷を深めるシリア情勢
長年にわたる内戦により、シリアは疲弊し、多くの人々が命を落としたり、避難を余儀なくされています。今回のアレッポでの戦闘激化は、シリアの不安定な情勢をさらに悪化させる可能性があります。一刻も早い和平の実現と、人道支援の拡充が求められています。