北陸新幹線のルート選定は、小浜ルートと米原ルートのどちらが最適か、長年にわたる議論の的となっています。小浜ルート推進派は、東海道新幹線への依存を避ける完全別線を主張し、米原ルートでは災害時などに運行がストップするリスクを懸念しています。一方、米原ルート推進派は、巨額の建設費を要する小浜ルートに対し、米原ルートは費用を抑えられる点を強調しています。
小浜ルートと米原ルートの費用対効果
小浜ルートは総工費約5兆円、米原ルートは約1兆円と、費用面で大きな差があります。米原ルート推進派は、残りの費用を新大阪までの別線建設や米原~新大阪間の複々線化に充てるべきだと主張しています。 中京圏へのアクセスや京都の水資源問題への配慮からも、米原ルートが現実的な選択肢と考える向きもあります。
北陸新幹線イメージ
しかし、両ルートの議論で重要な点が抜け落ちていると、鉄道ジャーナリストの北村幸太郎氏は指摘します。それは、東京側のボトルネックです。小浜ルートで東海道新幹線への依存を避けるべきという主張は、皮肉にも、東京側では米原ルートと同様に東北新幹線への依存が生じる点を無視しています。
東京駅の深刻な容量不足
現在、北陸新幹線は高崎~大宮間で上越新幹線と、大宮~東京間で東北新幹線と線路を共用しています。東京駅では最短3分45秒間隔で列車が発着し、既に容量は限界に達しています。清掃が間に合わない車両は上野駅まで回送するなど、運用上の工夫で対応していますが、北海道新幹線札幌延伸開業後はさらに逼迫することが予想されます。
東北新幹線イメージ
仮に東北新幹線10両編成1本が航空機2機分の輸送力と仮定すると、東京~北海道間の新幹線は現在の毎時1本から2~3本に増発する必要があります。上越・北陸新幹線の現状維持であれば、定期列車は何とか運行可能ですが、臨時列車は殆どが大宮駅で折り返すことになるでしょう。仮に全列車を東京駅に乗り入れさせても、東北新幹線にトラブルが発生すれば、北陸新幹線も影響を受けることは避けられません。
大宮~都内区間への別線構想:国鉄時代の知られざる計画
実は、国鉄時代には大宮~都内間に第二の新幹線を建設する構想がありました。この構想は、東京駅への集中を避けるための代替路線として計画されたものです。 もし小浜ルートを推進するのであれば、東京側の二重化を図るこの構想の再検討が不可欠と言えるでしょう。ルート選定における費用対効果だけでなく、将来的な需要予測や災害時のリスクヘッジも考慮した上で、多角的な視点からの議論が求められています。