トランプ前大統領、雇用統計「操作」主張で労働統計局長解任を指示:統計信頼性への懸念

【ワシントン発】ドナルド・トランプ米前大統領は1日、政府の経済統計を取りまとめる労働省労働統計局(BLS)のマッケンターファー局長に対し、統計データを政治的意図で「操作」していると主張し、即時解任を指示しました。自身のSNSを通じてこの決定を明らかにしたトランプ氏の動きは、関税政策の混乱などを受け経済指標が悪化する中で、自身を政治的策動の「被害者」と印象付ける狙いがあるものとみられ、米国の公的統計に対する信頼性の低下を招くとの懸念が広がっています。

7月雇用統計発表後の解任指示とその主張

トランプ氏の解任指示は、労働省が同日発表した7月の雇用統計速報値(季節調整済み)が、市場予想を下回る非農業部門就業者数7万3千人増にとどまった数時間後のことでした。トランプ氏は自身のSNSで、根拠を明確に示さないまま、「(数字は)バイデン前政権に任命されたマッケンターファー氏によって作られたものだ」と不満を表明。さらに別の投稿では、「共和党と私を悪く見せるために雇用統計が不正に操作された」とまで述べ、統計の公平性に疑義を呈しました。

米雇用統計の「操作」を主張し、労働統計局長解任を指示するドナルド・トランプ前大統領米雇用統計の「操作」を主張し、労働統計局長解任を指示するドナルド・トランプ前大統領

マッケンターファー局長の経歴とトランプ氏の追加的非難

米メディアの報道によると、解任を指示されたマッケンターファー氏は、国勢調査局で長年にわたり経済分析を担当してきた専門家であり、2023年に上院の承認を経て労働統計局長に就任しました。トランプ氏はSNSの投稿で、2024年の大統領選イヤーに雇用が好調だったのは、民主党候補であったカマラ・ハリス前副大統領を後押しするため、マッケンターファー氏が数字を「捏造(ねつぞう)」した結果だと主張。後任には「もっと有能でふさわしい人物」を指名する意向を示しました。

米雇用統計の下方修正と労働市場の現状

米国では近年、雇用統計が大幅に下方修正されるケースが相次いでいます。今回の発表でも、5~6月分の非農業部門就業者数の伸びが当初の速報値より合計約26万人少なかったことが公表され、労働市場の急激な悪化に対する懸念が一段と強まりました。こうした速報段階での統計精度の低下については、トランプ政権による過去の政府職員の大量解雇が背景にあるとの指摘も一部で聞かれます。

発表されたばかりの7月米雇用統計速報値と、下方修正された過去の非農業部門就業者数推移を示すチャート発表されたばかりの7月米雇用統計速報値と、下方修正された過去の非農業部門就業者数推移を示すチャート

労働統計局の役割と統計信頼性への影響

労働統計局は、雇用統計の他にも消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)といった重要な経済指標を発表しており、これらは米経済のみならず世界経済に大きな影響力を持っています。トランプ氏が自身の意に沿わないデータを一方的に否定し、局長を解任した今回の事態について、第1次トランプ政権とバイデン政権の両方で労働統計局長を務めたビル・ビーチ氏は1日、米ニュースサイト「ポリティコ」上で、「統計システムの信頼性を傷つける危険な前例だ」と強く批判しました。

結論

トランプ前大統領による労働統計局長への解任指示は、米国の重要経済統計に対する政治的介入の疑念を生じさせ、統計の客観性および信頼性に深刻な影響を与える可能性があります。この動きは、今後の米大統領選を巡る政治情勢と経済動向に、さらなる不確実性をもたらすものとして、国際社会からも注視されています。

参照元

出典: https://news.yahoo.co.jp/articles/ac30255f3cbe8bea964b913960dc614a20ebb888