ウクライナ侵攻の長期化が続く中、ロシアとウクライナの2025年度予算が相次いで成立しました。両国とも国防費が大幅に増加し、財政を圧迫している現状が浮き彫りとなっています。本記事では、両国の予算内容と今後の課題について詳しく解説します。
ロシア:国防関連予算、歳出の4割超え
ロシアでは11月30日、プーチン大統領が2025年度予算を承認しました。モスクワ・タイムズなどの報道によると、軍事費と治安対策費を合わせた国防関連予算は、歳出総額の41%を占める約17兆ルーブル(約24兆円)に達します。これは前年比で約20%の増加です。ロイター通信によれば、対GDP比では6.3%にものぼります。
ロシアのプーチン大統領
この国防費の増大は、軍隊の定員増加や兵器の増産などが要因とみられています。ロシア国防省は、砲弾の生産量が侵攻前と比較して17.5倍、無人機は17倍、戦車は5.6倍に増加したと発表しています。
増税で財源確保も公共事業は資金不足
膨張する国防関連予算の財源確保のため、ロシア政府は増税や他分野の予算削減に踏み切っています。2025年から法人税は20%から25%に引き上げられ、個人所得税も年間所得500万ルーブルを超える人を対象に増税されます。カーネギー国際平和財団の専門家は、「公共事業は資金不足に陥っている一方で、増税分はすべて軍事費に充当されるだろう」と指摘しています。
ウクライナ:国防関連予算、歳出の6割
ウクライナでも11月28日、2025年度予算が成立しました。ロイター通信によると、歳出総額3兆6000億フリブニャのうち、国防関連予算は約6割にあたる2兆2000億フリブニャ(約8兆円)を計上。これは前年比で約30%の増加となり、対GDP比では26%に達します。
「戦争税」導入も財政支援に依存
ウクライナ政府は財源確保のため、「戦争税」を導入し、個人所得税を1.5%から5%に引き上げ、銀行の利益に50%の税を課すなど、金融機関への負担を強化しています。しかし、これらの措置を講じても歳入は2兆500億フリブニャにとどまる見通しで、不足分は外国からの財政支援に頼らざるを得ない状況です。まさに「綱渡り」の予算と言えるでしょう。
ウクライナの無人艇がロシア艦に体当たり
長期化による財政負担の増加
両国ともに、侵攻の長期化による財政負担の増加は深刻な問題となっています。軍事費の増大は、国民生活への影響も懸念されます。今後の両国の財政状況、そして侵攻の行方に注目が集まります。