退職代行利用の実態:「弱気な怠け者」ではない真面目な人々が追い詰められる理由【モームリ代表が語る】

近年の日本において、退職代行サービスの利用が急速に広まっています。中でも最大手の一つである「モームリ」は、その利用者層について一般的に持たれているイメージとは異なる実態を明かしています。代表の谷本慎二氏は、退職代行を利用するのは「退職を自分から伝えられない弱気な怠け者」ではなく、むしろ「真面目すぎる」がゆえに追い詰められてしまった人々であると指摘します。このサービスが広く利用されている現状は、「正しい状態ではない」と警鐘を鳴らしています。本記事では、モームリ代表が語る退職代行利用者の実情と、その背景にある企業の課題に迫ります。

退職代行サービス「モームリ」に依頼する人々は、世間で囁かれる「自分で辞められない弱気な人間」というイメージとは大きく異なります。有料サービスであることから、「少し面倒くさい」といった安易な動機で依頼するケースは稀です。実際に依頼してくるのは、何度も会社に退職の意向を伝えたにもかかわらず引き止められたり、いわゆる「ブラック企業」で上司からのハラスメントに遭い、自力での退職が困難になってしまったりした人々が大多数です。

中には、3回も退職を申し出たものの認められず、最終手段として土下座までしたが退職を拒否された、という非常に深刻な事例も存在します。こうした極端なケースからもわかるように、退職代行への依頼は、自らの力ではどうすることもできない状況に追い込まれた人々の「助けを求める声」なのです。わたしたち退職代行側が企業に退職の意思を伝えると、担当者が逆上して怒鳴ってきたり、「当社は退職を認めておりません」と平然と法律違反を口にしたりするケースに遭遇することもあります。また、退職自体は受け入れられそうになっても、最後に残っている有給休暇の消化を申し出ると「それは認められない」と拒否されることも珍しくありません。

退職代行サービス「モームリ」代表 谷本慎二氏退職代行サービス「モームリ」代表 谷本慎二氏

これらの企業側の対応は、退職の自由や有給休暇の取得といった労働者の権利を定めた法律に明確に違反しています。依頼者本人が直接こうした対応を迫られ、精神的に追い詰められてしまう状況が、退職代行への最後の依頼へと繋がっています。つまり、多くの退職代行利用者は、「怠け者」どころか、むしろ責任感が強く真面目すぎる性格がゆえに、過酷な労働環境や会社の不誠実なマネジメントによって心身ともに疲弊し、自力で現状を打破できなくなってしまった人々です。中には、すでにメンタルヘルスを病んでしまい、通院している方もいらっしゃいます。

このような「仕事によって人生を狂わされそうになった人」にとって、退職代行サービスは、文字通り「救済措置」であり、「心を支える最後の拠り所」となり得ます。依頼者の方々が抱える重い思いに応えるため、モームリではオペレーターが24時間体制で相談や依頼を受け付けています。特にLINEでの問い合わせには3分以内の返信を徹底し、未読スルーは絶対にしないよう細心の注意を払っています。これは、一刻も早く現状から脱したい、誰かに話を聞いてほしいという切迫した依頼者の心情に寄り添うためです。

元日本マイクロソフト業務執行役員で今回のインタビュアー 澤円氏元日本マイクロソフト業務執行役員で今回のインタビュアー 澤円氏

退職代行サービスの需要が高まっている背景には、個人の「弱さ」だけでなく、企業側のパワーハラスメント、過重労働、そして法律を軽視する姿勢など、根深い労働問題が存在します。退職代行は、こうした問題から従業員を守るためのセーフティネットとしての側面を強く持っています。真面目な人々が退職という当然の権利を行使するために第三者の助けを必要とする現状は、日本の職場環境や企業文化が改善されるべき多くの課題を抱えていることを示唆しています。このサービスが不要となるような、労働者が安心して働き、そして円滑に次のステップへと進める社会の実現が求められています。

参考文献:
マイナビ健康経営 YouTube番組「Bring.」動画
「退職代行サービス経営者だけが知っている、若手社員が会社をすぐに辞めるいくつかの要因」
「人手不足時代、大切な社員をどう確保すべきか?退職代行サービス会社が実践する従業員ケア」
PRESIDENT Online 掲載記事 (Yahoo! News 配信)