【劇場版ドクターX】岸部一徳、名バイプレイヤーの軌跡:GSから大門未知子の盟友へ

この記事では、劇場版ドクターXで神原晶を演じた岸部一徳さんの俳優としてのキャリア、そして名バイプレイヤーとしての魅力に迫ります。アイドル時代から俳優への転身、樹木希林さんとの出会い、そして「ドクターX」での活躍まで、その輝かしい道のりを辿ります。

アイドルから俳優へ:転身のきっかけ

岸部一徳さんといえば、ザ・タイガースのメンバーとして一世を風靡したアイドル時代が有名です。しかし、グループサウンズのブームが過ぎ去った後、彼は俳優という新たな道を歩み始めました。その転身のきっかけとなったのは、TBSの演出家・久世光彦さんの一言だったと言われています。演技経験のない岸部さんに俳優を勧めた久世さんの慧眼は、後の名バイプレイヤー誕生を予感させるものだったのかもしれません。

岸部一徳と米倉涼子岸部一徳と米倉涼子

樹木希林との出会い:俳優としての成長

俳優としての道を歩み始めた岸部さんは、樹木希林さんの事務所に所属します。質の高い作品への出演にこだわる事務所の方針のもと、10年間研鑽を積みました。「いい作品を選ぶのは当然だが、合わない仕事は断る」という姿勢は、俳優としての信念を育むと共に、生活の苦労も伴うものでした。しかし、この10年間は、俳優としてのあり方、芸能界との向き合い方を学ぶ貴重な時間となりました。後に日本の名女優として名を馳せる樹木希林さんとの出会いは、岸部さんの俳優人生に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

映画「死の棘」:転機と学び

岸部さんの俳優としての飛躍のきっかけとなったのは、小栗康平監督の映画「死の棘」(1990年)への出演でした。完璧主義者として知られる小栗監督のもと、半年にも及ぶ撮影は困難を極めたと言います。脚本の難解さ、表現の難しさ、監督の意図を汲み取る難しさ…。しかし、完成した作品を観て、岸部さんは監督の意図、そして自身の演技の真意を理解したのです。

この作品で岸部さんは、「俳優は映画全体のほんの一部であり、他のスタッフとの協働によって作品が完成する」という重要な学びを得ます。照明、録音、美術など、様々なスタッフの力が結集して初めて、映画は完成形に近づくのです。この経験は、その後の岸部さんの俳優活動における指針となりました。

東京国際映画祭での米倉涼子と岸部一徳東京国際映画祭での米倉涼子と岸部一徳

「ドクターX」神原晶:名バイプレイヤーの真骨頂

そして、「ドクターX」の神原晶役。岸部さんは、米倉涼子さん演じる大門未知子を支える名医紹介所長を12年間演じ続けました。飄々とした雰囲気の中に、確かな存在感を示す演技は、まさに名バイプレイヤーの真骨頂と言えるでしょう。劇場版をもってシリーズが終幕を迎えることについては、「寂しさはある」としながらも、どこか達観した様子を見せています。

岸部一徳:染まらない魅力

ヤクザから善人まで、どんな役柄にも自然体で溶け込む岸部一徳さん。その変幻自在の演技の秘訣は、「染まらないこと」なのかもしれません。一つのイメージに固執せず、常に新しい役柄に挑戦し続けることで、唯一無二の存在感を放つ名バイプレイヤーとして、これからも私たちを魅了し続けてくれることでしょう。