三原じゅん子氏「報告ゼロ会見」の波紋:総辞職後も残る不信感

10月21日午前の閣議で、石破茂内閣が総辞職しました。退任した石破氏(68)には官邸職員からの花束が手渡され、SNSでも労いの声が広がった一方で、対照的な評価を受けた閣僚がいます。それは、内閣特命担当大臣(こども家庭庁担当)を務めていた三原じゅん子氏(61)です。特に、10月17日に行ったこども家庭庁の大臣記者会見における「報告ゼロ」の対応は、彼女の資質と、約7.3兆円(令和7年度)という巨額の予算が投じられる同庁の存在意義に対して、深刻な不信感を広げました。退任会見で詳細な活動報告を行ったにもかかわらず、公衆の厳しい視線は最後まで彼女につきまとった形です。

「報告ゼロ」会見で広がる不信感

三原氏への批判が集中するきっかけとなったのは、10月17日の大臣記者会見でした。会見場に現れた三原氏は、幹事社の記者から冒頭の発言を求められると、開口一番「はい、みなさんおはようございます。冒頭、私からご報告は特にございません」とコメントしました。その後、質疑応答に移ったものの、記者からの質問も一切なく、会見はわずか27秒ほどで終了しました。この実りない会見に対し、SNS(旧X)では「楽な仕事。いいなぁ」「報告することがないんやろ?」など、厳しい声が上がりました。

こども家庭庁には、児童手当(約2兆1,700億円)や育児休業等給付(約1兆600億円)といった重要な給付金や支援金を含む、巨額の予算が投じられています。しかし、その成果が見えにくいこともあり、同庁の存在意義は度々疑問視されてきました。このような背景の中で発覚した「報告ゼロ」会見は、三原氏の大臣としての資質と、こども家庭庁に対する否定的な見方に拍車をかける結果となりました。

こども家庭庁の閣僚として厳しい視線を集めた三原じゅん子氏こども家庭庁の閣僚として厳しい視線を集めた三原じゅん子氏

退任会見での“大サービス”と依然厳しい世論

内閣総辞職の日である21日、三原氏は最後の大臣記者会見に臨みました。この日の会見は、前回の27秒とは打って変わって24分におよぶボリューミーな内容でした。三原氏は冒頭、「はい、みなさんおはようございます!」とはつらつとした挨拶を述べた後、退任に伴う所感を表明。「大臣就任時から現場に足を運び、様々な関係者の方の声に耳を傾けて政策に反映させることを大事にしながら取り組んできた1年でした」と振り返りました。

続けて、今年4月の国会で成立した改正児童福祉法、価値観が多様化する中で“生きづらさ”を抱える子どもたちのための「こどもの悩みを受け止める場に関するプロジェクトチーム」設立、「旧優生保護法」をめぐって補償金等の支給に取り組み、全面解決に向けた協議を開催したことなど、約10分間にわたり自身の活動を詳細に報告しました。

会見の締めくくりに、三原氏は「私は大臣を離れますが、それぞれの施策が今後も着実に進むように私自身も引き続き力を尽くしていきたいと考えております。改めて在任中の皆さま方に感謝を申しあげ、私の退任の挨拶といたします」と語りました。残りの時間は質疑応答に充てられ、記者からはこども家庭庁の政策に関する具体的な質問が複数寄せられるなど、前回と比較して実りある会見に見えました。

しかし、三原氏がXに《この385日間、内閣府特命担当大臣として担務に全力で取り組めた事に感謝。ぜひ最後までご覧ください》と会見の動画URLを添えて投稿すると、以下のような厳しい声が噴出しました。

  • 《全力の結果が報告なしの連発。一般企業じゃ即解雇ですよ?国会は窓際属の集まりなんでしょうか?》
  • 《全力で取り組めてましたか?全く仕事してないから報告無しなのでしょ!》
  • 《退任会見では、それなりにやっている質疑応答、前回会見でもできたでしょうに。そういうことですよ、と僭越なら申し上げたい。「一番、叩かれている省庁」であることを覚悟して、愚直に地道にこどもまんなか社会の構築に向けて頑張ってほしい》
  • 《何が全力だよ何にも功績残してないじゃん。コメ欄閉じてるあたり国民の声なんか聞く気ゼロだよ》

最後の会見まで、公衆の厳しい「ダメ出し」が連発される中、三原氏は大臣としての役目を終えることになってしまいました。

政治部記者が語る「報告ゼロ」の背景と課題

政治部記者によると、今回の「報告ゼロ」問題の余波がここまで広がったのは、やはり前回の会見における対応が問題視された結果だといいます。このため、今回の退任会見で急に発言が増えたことが、三原氏が“無理やり”成果を強調しているように聞こえてしまい、不信感を募らせる要因になったのでしょう。とはいえ、最後の会見である以上、三原氏としても何も話さないという選択肢はなかったはずです。

しかし、前回の会見がSNSやネットニュースで大きく取り上げられ、会見の実情を知った人も多いかと思いますが、実は10月に開かれた三原氏の会見は5回とも全て“報告ゼロ”でした。大臣会見において必ず何かを話さなければいけないという明確なルールは存在しません。しかし、こども家庭庁のように約7.3兆円という巨額な予算を扱い、世間から常に厳しい視線を向けられている省庁の場合、具体的な成果報告がなくとも、ほんのわずかな進捗でもあるなら、それを積極的に発信しない手はない、と政治部記者は指摘します。

国民の税金が投入され、未来を担う子どもたちの福祉に直結する重要な政策を扱う機関であるからこそ、その活動内容や進捗状況について、より丁寧かつ詳細な情報公開が求められます。

結び

三原じゅん子氏は、度重なる「報告ゼロ会見」によって募った不信感を払拭できないまま、こども家庭庁担当大臣としての任期を終えました。石破内閣総辞職という大きな節目において、その退任会見が「遅すぎた報告」として受け止められ、世論の厳しい評価に直面したことは、政治家としての情報発信の重要性を改めて浮き彫りにしました。高市早苗首相(64)の元では閣僚としての登用はなかった三原氏ですが、今後、この1年間で蓄積された国民の不信感をどのように解消し、再び信頼を勝ち取ることができるのか、その動向が注目されます。


参考文献