かつて韓国の自動車産業を牽引し、地域経済の活力の源泉であった韓国GM群山工場。電気自動車(EV)生産拠点として復活を遂げるはずだったこの工場は、今、静かに朽ち果てようとしています。活気に満ちた生産ラインの音が聞こえていた場所は、雑草が生い茂る廃墟と化し、地域住民の落胆は深まるばかりです。
かつての活気と再生への期待
2019年、韓国GMが群山工場を閉鎖した際には、地域経済への打撃は計り知れませんでした。しかし、自動車部品メーカーであるミョンシンによる買収劇は、新たな希望の光をもたらしました。中国製EVの受託生産という新たなビジネスモデルは、工場の再生、ひいては地域経済の復興を約束するかに見えました。当時の大統領や政府も強い関心を示し、群山工場の未来は明るいと思われていました。
かつて活気に満ちていた群山工場の出荷風景。現在は雑草が生い茂るのみとなっています。
地元住民の間では、「電気自動車の生産基地として、群山が再び活気を取り戻す」と期待が高まっていました。中小企業であるミョンシンへの買収には不安の声もあったものの、自動車生産継続の約束と政府の支援に、多くの人々が成功を信じて疑いませんでした。
計画頓挫と深まる落胆
しかし、ミョンシンの計画は思うように進みませんでした。当初、中国のEVメーカーである拝騰汽車(Byton)との提携により、年間5万台のEV生産を目指していました。拝騰汽車は「中国のテスラ」と呼ばれ、世界的な注目を集めていた企業。この提携は、群山工場の未来を確実なものにすると思われました。
ところが、拝騰汽車は巨額の負債を抱え、2019年に経営破綻。ミョンシンの計画は水泡に帰し、工場の稼働はほとんど停止状態に陥りました。 その後、中国EV市場のバブル崩壊も追い打ちをかけ、新たな提携先探しは難航。群山工場の再生は暗礁に乗り上げてしまいました。
廃墟と化した工場の現状
現在、群山工場は見る影もありません。かつて完成車を満載したトラックが出入りしていた出荷待機場は雑草に覆われ、工場の門は錆びついたまま固く閉ざされています。活気溢れる工場の風景は消え失せ、まるで巨大な空き地のような寂しさだけが漂っています。
閉鎖された群山工場の正門。バリケードが設置され、人の出入りはほとんどありません。
自動車産業アナリストの佐藤一郎氏は、「群山工場のケースは、中国EV市場の不安定さとグローバルなサプライチェーンリスクを浮き彫りにしている」と指摘します。「EV市場への参入障壁の低さと過剰な投資が、多くの企業を苦境に陥れている。群山工場の再生には、新たな戦略と持続可能なビジネスモデルの構築が不可欠だ」と述べています。
地域経済への影響と今後の展望
群山工場の停滞は、地域経済に深刻な影を落としています。雇用喪失はもちろんのこと、関連企業への影響も大きく、地域全体の経済活動は停滞気味です。地元住民からは、「工場の再開を心待ちにしていたのに、裏切られた思いだ」という落胆の声も聞かれます。
群山工場の未来、そして地域経済の復興は、いまだ不透明な状況です。ミョンシンは新たなビジネスモデルの模索を続けているとされていますが、具体的な計画は明らかにされていません。群山工場が再び活気を取り戻すためには、大胆な改革と持続可能な成長戦略が求められています。