シリア内戦が激化の一途を辿っています。反体制派による電撃的な攻勢が続き、国内第3の都市ホムスが包囲される危機に瀕しています。数万人の市民が避難を余儀なくされ、人道危機への懸念が高まっています。この記事では、緊迫するシリア情勢の現状、ホムス包囲の背景、そして今後の展開について詳しく解説します。
反体制派、ホムス郊外へ到達
反体制派は、電撃的な進軍を開始してからわずか1週間余りでホムスの郊外に到達したと主張しています。これは、北部アレッポに続き、アサド政権にとって大きな痛手となる可能性があります。イスラム武装組織「ハヤト・タハリール・アル=シャーム機構(HTS)」の指導者アル=ジョウラニ氏は、ホムス市民に対し、「あなたたちの番だ」と挑発的なメッセージを発信しています。
シリア反政府勢力
シリア内戦は13年前に勃発しましたが、今回のような急速な進軍は前例がありません。これは、アサド政権の弱体化を如実に示すものと言えるでしょう。シリア人権監視団(SOHR)によると、反体制派は既にホムスまで数キロの距離に迫っており、ロシア軍の空爆も進軍を阻止するには至っていません。
ホムス陥落のインパクト
ホムスは、地中海沿岸のアラウィ派中心地域と首都ダマスカスを結ぶ戦略的な要衝です。ホムスが陥落すれば、アサド政権の支配地域はさらに縮小し、首都ダマスカスへの圧力も増大するでしょう。既に多くのアラウィ派住民がホムスから避難を開始しており、混乱は拡大しています。
南部ダルアー県でも反体制派が優勢
ホムスだけでなく、南部ダルアー県でも反体制派が攻勢を強めています。SOHRによると、ダルアー県の約9割を反体制派が掌握しており、政府軍はサナマイン地区のみを維持している状態です。ダルアー県は、ヨルダン国境の主要通貨地点に近く、2011年の反政府デモの中心地でもあったことから、象徴的な意味合いを持つ地域です。
ダルアー県の反体制派は、政府軍の撤退と軍高官の安全な帰還を条件に合意したと報じられています。もしこれが事実であれば、アサド政権の支配力はさらに弱体化することになるでしょう。
国際社会の反応と今後の展望
ロシア政府は、自国民に対しシリアからの出国を勧告しました。これは、シリア情勢の悪化を深刻に受け止めていることの表れでしょう。アサド大統領は反体制派の「粉砕」を宣言し、西側諸国を非難していますが、現状を打破するのは容易ではありません。
シリア情勢
ロシアとイランはアサド政権の主要な同盟国ですが、両国とも以前のような大規模な軍事支援は提供していません。ロシアはウクライナ侵攻に注力しており、イランもイスラエルからの攻撃で弱体化しています。
トルコは一部の反体制派を支援しており、エルドアン大統領はアサド大統領に政治的合意を呼びかけてきました。エルドアン大統領は、アサド大統領が自らの呼びかけに応じなかったことが今回の反体制派の攻勢につながったと主張しています。
HTSのアル=ジョウラニ代表は、自らの過激派イメージ払拭に努めており、シリア国内の少数派コミュニティの保護を約束しています。また、シリア国外への攻撃には反対する立場だと表明しています。
今後のシリア情勢は予断を許しません。ホムス包囲の行方、南部ダルアー県の動向、そして国際社会の対応が、シリア内戦の今後を左右する重要な要素となるでしょう。