警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、足を洗ったつもりでも過去が追いかけてきて色眼鏡で見られる件について。
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「20年やっていなくても、それを持っていた時に警察に捕まれば、『あいつ、止めたとかいってたけど、やっぱりやってたんじゃねえか』と言われるのがこの世界だ」と、暴力団の古参幹部は口の端を上げ鼻で笑った。
彼がそう言ったのは、長く住み慣れた家を引っ越した際、荷物を整理していてある物が出てきたことがあったのを思い出したからだ。それは彼が調達をし、売人として売りさばいていた時の品、コカインだ。いつそこに隠したのか、すっかり忘れていたという古参幹部は、20年ほど前から違法薬物は一切やっていない。だが、シノギとして大麻やコカインを売っていた時期があり、当時の物が、洋服類を段ボールに詰めていた時にクローゼットの引き出しからポロっと出てきたのだ。
「見つけた時は驚いた。こんな所にも入れていたのかってね」。小さなビニール袋は、丸めて折りたたまれていた靴下の中から出てきた。「靴下を畳んで、くるんと丸めて、その中に押し込んで隠していた。いつだったか、他のヤツが捕まって、その流れて警察がきて俺の所も家宅捜索するということになって、慌てて隠したんだったかな。俺も捕まらなかったし、そこにあるということは、警察も靴下の中の中までは探さなかったんだな」と幹部はいう。
警察に目をつけられたことで、売人もやめたという古参幹部は、「自分で使っていなかったから、クスリに執着がなかった」という。どこに隠したのか忘れてしまっていたというが、「見つけた時は、慌てた」という。「部屋には俺しかいないのに、靴下から出てきた時は、思わず辺りをキョロキョロ見回してしまった。習性というか性というか、誰かに見られていないかと不安になるんだろうな。キョロキョロした後で、自分で自分を笑っちゃったよ」と苦笑いした。