V系バンド「グランギニョル」、ひめゆり学徒隊モチーフライブに批判殺到で活動休止

太平洋戦争末期の「沖縄戦」に看護要員として動員され、多大な犠牲を払った「ひめゆり学徒隊」。その悲劇的な歴史をライブのコンセプトに取り入れ、学徒の写真を加工して宣伝に使用したV系バンド「グランギニョル」に対し、社会的な批判が殺到しました。この事態を受け、那覇市での予定されていた公演は中止となり、バンドは謝罪の上、活動休止を発表しています。

背景:ひめゆり学徒隊とは

ひめゆり学徒隊は、沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の生徒および教員計240人で結成され、当時15歳から19歳の少女たちが沖縄戦の最前線で命がけの看護活動に従事しました。しかし、一方的な解散命令後、多くの生徒と教師が自決や戦死という悲惨な運命を辿ったことで知られています。彼女たちの体験は、沖縄戦の悲惨さを今に伝える重要な歴史的証言となっています。

問題の発端と批判の声

グランギニョルは、12月10日から12日にかけて那覇市で開催予定だった単独公演を「ひめゆり学徒隊」と題し、ライブの宣伝に「目線を入れた学徒の写真」を使用したり、メンバーが学徒隊のコスプレをしたりしました。音源には空襲警報も取り入れるなど、その表現方法が「不謹慎だ」として、県民を中心に多くの怒りの声がライブハウスに寄せられました。特に、使用された写真がひめゆり平和祈念資料館所蔵とみられ、元館長や沖縄戦で亡くなった学徒たちが写っていたにもかかわらず、バンド側が資料館に許諾を得ていなかったことも問題視されました。

沖縄戦で犠牲となったひめゆり学徒隊の学徒たち沖縄戦で犠牲となったひめゆり学徒隊の学徒たち

X(旧Twitter)上では、「やって良い事といけない事の区別ができない」「沖縄の歴史に対して本当に無礼だ」といった厳しい意見が相次ぎ、「日本の教養どうなってる?」「ビジュアル系名乗らないで欲しい」など、バンドの姿勢や教育に対する疑問の声も多く見られました。

バンド側の謝罪と活動休止

批判の反響を受け、バンド側は12月13日に公式Xで謝罪文を発表しました。「配慮および説明不足により、多数の方々に不快な思いをさせたこと」を謝罪し、「グランギニョルなりに沖縄の歴史について学ばせていただいた上で、ライブコンセプトの一部として表現に取り入れさせていただきました」と意図を説明しました。しかし、「十分な配慮が欠けていたことを深く反省しております」と述べ、当面の活動休止と公演チケットの返金を発表しました。

資料館からのコメント

謝罪後も、コメント欄には「どこをどう学んだらこんな結果になるのか」「今後、沖縄に来るな!」といった辛辣な声が多数寄せられています。琉球新報の取材に対し、ひめゆり平和祈念資料館の普天間朝佳館長は「生きたくても生きることができなかった友達の無念さを伝えてきた元学徒は、友達がこのように加工されているのを見て悲しみと憤りを覚えると思う。私もショックで不快だ」とコメント。バンドメンバーには、まず歴史を深く理解することから始める必要性が改めて示唆されました。

結び

今回の騒動は、歴史的悲劇をモチーフとして扱う際の表現の自由と倫理のバランスについて、改めて社会に問いを投げかけるものとなりました。特に感受性の高い歴史的事実や、多くの人々の記憶に深く刻まれた出来事を扱う際には、最大限の敬意と慎重な配慮が不可欠であることを示しています。