グーグル窮地、狭まる国際包囲網 課税逃れ…独占的な地位にも批判


 脱税疑惑に関する捜査でフランス政府と和解した米IT大手グーグルは納税のあり方をめぐり、国際的な批判にさらされてきた。アイルランドなどの低課税国に利益を集中させる手法は、グーグルやアップルなど「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる巨大IT企業に共通しているとされる。解決策をめぐる各国の思惑には差もあるが、日本は多国間の課税ルール作りに向けた意見集約を目指す。グーグルは独占的な地位を利用して市場をゆがめているなどの批判も受けており、じわじわと包囲網は狭まっている形だ。

 グーグルとの和解を受け、フランスのダルマナン公会計相は「歴史的な合意だ」と評価した。欧米メディアによると、グーグルは2016年に英国と、翌年にはイタリアとも和解。巨額の利益をあげながら低課税国を利用して納税額を抑える手法は国際的な批判にさらされている。

 こうした課税逃れの背景には「物理的拠点が国内になければ、その国は課税できない」とする現行ルールの原則がある。このため各国はこの原則を見直す方向性で一致。うまくいけば国境を越えた音楽のインターネット配信サービスなどに各国が課税できるようになると期待されている。

 ただし具体策をめぐっては思惑が分かれている。米国は課税する利益の算定方法として、市場で生み出されたブランド力などの無形資産に着目する手法を主張。英国はオンラインサービスなどの利益に貢献した利用者の個人情報を重視する立場だ。また新興国は、ある市場で継続して売り上げを出しているなど「重要な経済的存在」とされる企業への課税を目指す。

 日本が議長国として主導した今年6月の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)などでは3案の折衷を目指す方向で合意。同時に各国間で法人実効税率の最低水準を設け、低税率国に利益を集めて課税を逃れるのを防ぐ仕組みを検討することでも一致した。

 一方、グーグルには独占的な地位をめぐる批判もある。9日には全米50州・地域の司法長官が反トラスト法に基づくグーグルの調査開始を発表。ネット検索で優勢なグーグルが検索連動型広告の競争をゆがめていないかが調査対象となる見通しだ。連邦政府も調査に着手し、米交流サイト大手フェイスブックなどとともに矛先を向けられている。

 日本でも公正取引委員会が8月、巨大IT企業の規制指針案を公表した。インターネットの検索や通販などのサービスを利用する個人を保護するため、グーグルなどを念頭に独占禁止法上の「優越的地位の乱用」を適用すると明示しており、GAFAに対する監視の目は厳しくなっている。(山口暢彦、ワシントン 塩原永久)



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