闇バイト撲滅への道:通信傍受法改正とおとり捜査強化が鍵

インターネットの普及に伴い、若者をターゲットにした「闇バイト」による犯罪が深刻化しています。高額報酬を謳い、SNSや求人サイトで募集をかけ、特殊詐欺や強盗の実行役を募る手口は、社会に大きな不安を与えています。本記事では、闇バイトの実態と、その撲滅に向けた対策について、東京都立大学の星周一郎教授(サイバー犯罪専門)の知見を交えながら解説します。

闇バイトの巧妙な手口と若者の脆弱性

闇バイトの募集は、「高額バイト」「即日即金」といった魅力的な言葉で若者を誘い込みます。応募者には顔写真付きの身分証明書や家族の個人情報の提出を要求し、逃げられないように仕向けます。その後、特殊詐欺や強盗といった犯罪行為の実行を強要するのです。

altalt闇バイトの被害は増加傾向にあり、社会問題となっています。

多くの被害者は、「逃げられなかった」「一度だけだと思って脅された」と供述しており、犯罪に加担せざるを得ない状況に追い込まれていることが分かります。

星教授は、闇バイトに手を染めてしまう若者の背景には、基本的なリテラシーの不足があると指摘します。「1日で大金を稼ぐのは不可能」「他人に個人情報を送ってはいけない」といった常識が欠如している若者は、闇バイトの甘い言葉に騙されやすいのです。また、インターネットを通じて他人と出会い、信頼関係を築くことに抵抗がない若者ほど、闇バイトとの接点も多くなると言えます。

摘発を阻む壁:通信傍受と捜査方法の限界

闇バイト撲滅のためには、実行役の逮捕だけでなく、指示役である首謀者の摘発が不可欠です。しかし、現状では、通信傍受と捜査方法に限界があり、摘発は容易ではありません。

闇バイトの指示役は、「テレグラム」や「シグナル」といった秘匿性の高いSNSを利用し、身元を隠蔽しています。これらのアプリは高度な暗号化技術を採用しており、捜査機関による通信傍受が困難です。

闇バイト撲滅の鍵:通信傍受法改正とおとり捜査の強化

星教授は、闇バイト根絶のためには、通信傍受法の改正と「おとり捜査」の実効性を高めることが重要だと提言しています。通信傍受法を改正し、捜査機関が秘匿性の高いSNSへのアクセスを合法的に行えるようにすることで、指示役の特定につながると考えられます。

また、おとり捜査においても、捜査員の身分を偽り、闇バイトの募集に応募することで、組織の実態解明や証拠収集を進めることが期待されます。

闇バイト撲滅に向けた今後の展望

闇バイトは、若者を犯罪に巻き込み、社会の安全を脅かす深刻な問題です。その撲滅には、法整備の強化だけでなく、社会全体の意識改革も必要です。

インターネットリテラシー教育の充実や、若者への適切な情報提供を通じて、闇バイトの危険性を周知徹底することが重要です。また、家族や周囲の人々が若者の変化に気を配り、早期に相談できる環境を整備することも大切です。

関係機関が連携し、多角的な対策を講じることで、闇バイトのない安全な社会を実現できるよう、尽力していく必要があります。